アルコール依存症モデル動物においてアルコール嗜好性増加に伴う脳内各部位におけるNKCC1、KCC2、GABAA受容体α1および6サブユニットの発現変化を検討した。また、神経細胞を用いてGABAA受容体α6サブユニットの発現調節機構を検討した。 アルコール嗜好性を獲得したマウスの前頭前野においてNKCC1およびGABAA受容体α6サブユニットの発現は有意に増加し、GABAA受容体α1サブユニットの発現は有意に低下した。また、扁桃体においてNKCC1の発現は有意に減少し、KCC2およびGABAA受容体α1サブユニットの発現は有意に増加した。また、NKCC1阻害剤を脳室内投与したところアルコール摂取量は有意に抑制された。これらのことからアルコール依存症発症はNKCC1およびGABAA受容体α6サブユニット発現増加に起因する恒常的な神経細胞内Cl-濃度の増加に伴うものと考えられる。 また、マウス大脳皮質由来初代培養神経細胞を用いた検討では、IκBキナーゼ阻害剤によりエタノールが誘導するcRelの核内移行が抑制された。また、ゲルシフトアッセイによりGABAA受容体α6サブユニットgeneのプロモーター領域に存在するNFκB結合サイトに対し、cRelが結合することが示された。また、IκBキナーゼ阻害剤によりエタノールが誘導するGABAA受容体α6サブユニット発現増加は有意に抑制された。これらのことからエタノールによるGABAA受容体α6サブユニット発現増加は、IκBキナーゼの活性化を介し核内移行したcRelがGABAA受容体α6サブユニットプロモーター領域に結合することによる転写促進機構に起因するものと考えられる。
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