研究課題
およそ2割の統合失調症患者においては、AGEs(advanced glycation end products:終末糖化合物)が蓄積したカルボニストレス状態であることが報告されている。我々は、カルボニルストレスが統合失調症の病因の1つである神経発達障害に関わっていると考え、カルボニルストレス性統合失調症患者からiPS細胞を樹立し、神経分化・発達に注目した解析を行うことで、カルボニルストレスと神経発達障害との因果関係を明らかにすることを目的としている。本研究では、統合失調症の発症及び、カルボニルストレスに関与する稀な遺伝子変異を持つ患者を対象とすることで、効果の大きい個別病理から普遍性を導けると考え、統合失調症関連遺伝子であり、カルボニルストレスの消去に関わるGLO1遺伝子にフレームシフト変異を持った統合失調症患者由来のiPS細胞を用いて研究を進め、本年度の研究では以下の知見を得た。健常者及び患者者由来iPS 細胞と、それぞれのiPS細胞から作製したNeurosphereを用いて細胞中のAGEs量を測定したところ、患者由来のiPS細胞、NeurosphereにおいてAGEs量の増加が見られた。患者由来のiPS細胞、Neurosphereにおいて疾患特異的に変化するAGEsが存在するのか調べるために、AGE-1、AGE-3、AGE-4、CMLに対する抗体を用いてWestern blottingを行ったところ、抗CML抗体によるWestern blottingにおいて、患者由来のiPS細胞では55 kDaのタンパク質、Neurosphereでは35 kDaのタンパク質のCML化が特異的に亢進していた。iPS細胞において疾患特異的にCML化している55 kDaのタンパク質を免疫沈降法及び質量分析器により同定した結果、神経細胞の突起伸長に関わるタンパク質であった。
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