てんかん患者には、うつ、不安、躁、幻覚、妄想、強迫などのさまざまな精神症状がみられる。これらは、てんかん発作と直接的、間接的に関連して出現し、てんかん病態そのものが関与していることが想定されているが、その発現機序は不明である。本研究では、てんかん外科治療を受ける患者を被験者として、術前、術後3か月時、術後1年時、術後2年時に精神医学的評価を行った。精神医学的評価に用いるバッテリーとしてMini-International Neuropsychiatric Interview (M.I.N.I)による構造化面接、ハミルトンうつ病評価尺度HAM-D、ハミルトン不安評価尺度HAM-A、陽性・陰性症状評価尺度PANSS、ヤング躁病評価尺度YMRS、エール-ブラウン強迫症状評価尺度Y-BOCS、発作間欠時不快気分症調査票IDDIを用いた。術前および術後3か月時が93名、術後1年時が67名、術後2年時が24名で評価を終えた。このうち、術前と術後3か月時に精神医学的評価を実施した側頭葉てんかん患者53名について予備的調査を行った。その結果、53名中19名で術前あるいは術後に何らかの精神疾患がみられ、術後新たに精神疾患が出現した3名中2名は術前から抑うつ、不安の傾向がみられた。被験者全体としては術前より術後3か月時に気分の改善がみられた。これらの結果を第48回日本てんかん学会学術集会(東京)で報告した。今後は、さらに同様の精神医学的評価を前方視的に継続し、てんかん外科治療を受ける患者の術前から術後2年までの精神医学的問題を明らかにする。また、てんかん外科治療を受ける患者の中には術前評価として頭蓋内脳波記録を行うものがいるため、その間に出現する精神症状と頭蓋内での脳波変化を明らかにできることが期待される。
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