研究課題
双極性障害の大多数の最初のエピソードでもあるうつ状態に対する不適切な介入は、患者の正常な社会認知を妨げ、社会生活を脅かす。その客観的評価は困難であることが多く、早期の治療介入や予後にすら多大な影響を及ぼす。本研究の目的は、気分障害を対象とし、ⅰ)高解像度1.5TMRIによる機能的MRIと全頭型脳磁図(MEG)組み合わせて用いることで、聴性定常反応(ASSR)におけるγ帯域同期活動を、より多角的に明らかにすること、ⅱ)高γ帯域活動、およびγ帯域活動への薬物の影響を調べることにある。具体的には、健常者とうつ病性障害及び双極性障害を対象に、聴覚刺激を与えた際の神経活動とその反応部位の違いを検索した。本研究進行中にMEGの撮影費用が大幅に上昇したが、脳の電気活動を計測する手段として、安価に測定が可能な64ch EEGを用いることに成功した。健常者(機能的MRI 29名、EEG 37名、MEG 10名)と双極性感情障害患者(機能的MRI 9名、EEG 10名、MEG 4名)およびうつ病性障害患者(機能的MRI 7名、EEG 7名、MEG 4名)の集積を行った。機能的MRIにおいては、右MCgG(Middle Cingulate Gyrus)で各群間における相互作用を認めた。また、EEGおよびMEGにて、双極性感情障害群で40hzにおけるPLF(Phase Locking Factor)の減少を認めた。気分障害患者においては、ASSRの疾患特異性を示す可能性が判明した。今後はさらに対象者を増やす必要があり、より多角的な解析を詳細に行うことで、気分障害の主症状であるうつ状態の神経学的基盤の解明と双極性障害・うつ病性障害の脳機能を指標とした鑑別につながることが期待できる。これらの結果をもとに、最終的には病状の客観的評価、診断、治療や治療評価への応用を目標とする。
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