研究課題
若手研究(B)
本研究は、Spot-scanning陽子線照射システムの低エネルギー照射技術の開発を目指したものである。「Spot-scanning照射」法は、従来法のように荷電陽子ビームを拡散させず、ペンシルビームを磁場の変動で振りながらターゲットを塗るようにスポットを置いていく事でスキャニング照射していく技術であり、飛程モジュレートを作るためのコンペンセータや腫瘍形状に合わせたコリメータを必要としない。ビームは加速器やビーム輸送系の制限やノズル構造によって決まる性質を持つ。この方法により、従来の陽子線治療では不可能であった、X線IMRTと同様に強度変調陽子線治療が可能になると共に、病変部周囲の線量はX線に比べて低減させることが可能となる。これは、ターゲットが複雑な頭頸部への照射や、中性子被ばくを避けたい小児治療に最も効力を発揮する照射法と言われている。そのような治療を目指し、この本照射システムにて70MeV(患者体表面から4cm)以下の領域にスポットを置く事で線量分布を改善し、ブラッグカーブのdistal fall offにおける勾配を緩める事で照射効率を上げ、また、位置誤差・線量誤差に対する感受性を下げて線量分布のロバスト性を高めた照射技術と治療計画技術を開発するのが本研究の目的である。本研究では、照射ノズルにエネルギー吸収体としてのレンジシフタを設置する方法のほか、電子線コンフォーマル治療にて使用されているようなボーラスを患者側に設置する方式を用い高精度陽子線治療を実現化を目指す。これらにより頭頸部の治療計画に必量な強度変調陽子線治療(IMPT)の技術を確立や、短飛程照射の必要な小児治療、呼吸性移動のある部位への照射方法を確立する事が本研究の概要である。
2: おおむね順調に進展している
モンテカルロシミュレーションにてビームの性質の把握を行い、適切なデバイスを設計した。ノズルに取り付けるアプリケータと患者側に設置するボーラスのデバイスは既に制作されており、ビームを用いた試験も既に開始している。予定通りの進展である。
制作したノズル取り付け方式のアプリケータ(レンジシフタとコリメータ)のビーム試験を行い、治療計画機登録用のビーム測定を行う。そして、治療計画機のコミッショニングを行う。制作したボーラスのビーム試験、解析、検証を行い臨床使用を目指す。ボーラスのフルエンスファクタの取得を行い、患者照射の前に必要な品質管理の手法と手順をまとめる。これらを用いた短飛程照射技術により、強度変調陽子線治療(IMPT)の技術を確立や、短飛程照射の必要な小児治療、呼吸性移動のある部位への照射方法を確立する。
本研究で設計した短飛程照射に用いるデバイスについて、構造を工夫することで、初期の見積もりより安価に制作することができた。これから実際にデバイスの試験を行い、その結果によって生じるであろう微調整にかかる費用を次年度使用額とした。当該年度に開発したデバイスを実際に臨床に用いるための検証を実施する。微調整の必要な部分をまとめ、加工を行う。次年度使用額として生じた分は、加工費と、加工のための技術者とのミーティングの旅費として使用する計画である。
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Radiation Oncology
巻: 8,48 ページ: 1-8
10.1186/1748-717X-8-48