陽子線のスキャニング照射法では、鋭いブラッグピークを持つ低エネルギー側において拡大ブラッグピーク(SOBP)の形成に多数のエネルギー段階と照射時間を要する。これは、浅い部位の照射や肺などの短飛程照射において問題となる。このような課題に対しては、炭素線照射に用いられるようなブラッグピークをガウス分布上に拡大するリッジフィルタが有効である。そして照射部位に応じて形状を最適化することが求められる。しかしながら従来のリッジフィルタは二等辺三角形に類似した断面を備えた尖鋭部を持つ。リッジフィルタにはビームサイズと同程度の繰り返し間隔が求められる事から、こうした尖鋭部はリッジフィルタの加工を困難にしていた。本研究では、実患者データと実現可能なビームデータのパラメータを用い、モンテカルロシミュレーションにより臨床利用に最適で、かつ、加工性を向上した形状のリッジフィルタの設計を行った。
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