研究課題
若手研究(B)
本研究は、X線等の放射線の影響によって発現亢進される分子をターゲットにし、正常と癌細胞間の相互作用を考慮した上で、それぞれの細胞における分子メカニズムの違いを理解することによって放射線治療に役立つ知見を提示する事を目的としている。特に、放射線照射後に、正常細胞の機能は損なわず、癌細胞の増殖・浸潤等の悪性化を防ぐことができる分子シグナルに着目し放射線治療効果を上げることが可能かを検討する。本研究は、複数の細胞(正常乳腺細胞と乳癌細胞)を細胞外基質を用いた3次元環境で培養するin vitro 3次元細胞共培養系を用いることが適切と考えられる。このような実験系を用い、放射線照射後の正常・癌細胞間において発現亢進する分子の情報伝達を3次元共培養下でリアルタイム追跡する事を試みている。本年度は、正常細胞と乳癌細胞の3次元培養の条件を絞り込み、放射線照射後に乳癌細胞特異的に発現変動が認められる分子をマイクロアレイ解析により同定した。マイクロアレイにおいて発現上昇が見られた分子に関し、タンパク質でも同様の発現の上昇を確認した。また、イメージング解析を遂行するためのVenus等の蛍光タグを付けた分子の遺伝子構築を進め、タンパク質発現の確認を行った。さらに、分子メカニズムの解析に用いるため、ターゲット分子をノックダウンした細胞の作成を行った。今年度に構築したシステムを用い、放射線照射によって癌細胞特異的に変化する分子メカニズムの詳細を解析する。
2: おおむね順調に進展している
乳腺上皮細胞と癌細胞の3次元共培養系の構築に必要な培養の条件検討を行った。正常上皮細胞のモデルとしてはMCF10A、乳癌細胞はMDA-MB-231とHs578Tを用い、X線照射により癌細胞特異的に発現が変動する分子の同定を行った。また、シグナルに変化が見られるX線の線量や、照射後の時間経過に伴うターゲット分子とその周辺分子の蛋白質発現の相関や変動等の検討を行った。さらに、着目した分子のプラスミド構築等を進める事により、次年度の解析に必要な実験系を整えた。
放射線照射後、正常・癌細胞の形態変化と分子シグナルを解析する。照射後の標的分子の発現量の変動に伴う局在の変化も、共焦点レーザー顕微鏡によって時間ごとに追跡し、正常と癌細胞で比較を行う。さらに、免疫沈降やプルダウンアッセイにより、タンパク質結合と相互作用を生化学的に解析する。
今年度は、実験計画の初期段階で、必要な条件を絞り込むことが可能となり、条件検討のための実験回数を減らすことができた。そのため、試薬を含む消耗品類の使用が減り、研究費の残額が生じた。3次元細胞培養に必要なマトリゲルや血清・培地等、免疫沈降と免疫染色に必要な抗体、遺伝子導入に必要な試薬等を購入を計画している。今年度に生じた残額を有用活用することにより、検討する癌細胞株の数を増やすことが可能となった。
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