本研究では“balloon閉塞下NBCA塞栓術”の開発を行うべく最終年度に豚動脈を用いた実験を更に追加した。 balloon閉塞下でのNBCAの動態を解明すると同時に、NBCA注入前後の血管造影所見からNBCA注入時の動態の予測因子についても解明を行うため、左右対称性に存在する豚動脈(肋間動脈や骨盤の動脈)を対象として、片側にballoonを用いない自由血流下のNBCA塞栓術を適応し、他方にはmicroballoon catheterを用いたballoon閉塞下(血流遮断下)NBCAを適応して、塞栓術前後の(更にballoon閉塞下NBCA塞栓術ではballoon閉塞前後)血管造影所見、比較検討した。なお用いたNBCA濃度は50%で固定。NBCA注入直前に血管造影を施行し、いずれも血管造影像を取得した後にNBCA注入による塞栓術を施行した。自由血流下の塞栓術ではNBCAがmicrocatheter先端に逆流を確認した時点でmicrocatheterを抜去した。Balloon閉塞下NBCA法では、注入したNBCAが標的血管内での先進が停止し、microballoon先端周囲にNBCAが逆流したのを確認した時点で、balloonを開放しmicroballoon catheterを抜去した。 Balloon閉塞下NBCA塞栓術では、自由血流下のNBCA塞栓術に比べ、NBCAキャスト(鋳型物)形成距離が有意に長く、NBCA断片化の頻度も有意かつ著明に低かった。Balloon閉塞下造影にて、側枝の逆流による血流停滞が得られていない場合に限り、NBCAキャスト形成距離が、側枝の逆流がない場合に比べて有意に短くなることと、断片化が生じる可能性があることも突き止めた。
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