前年度までに,免疫細胞(ヒト単球系細胞株THP1由来マクロファージ)における細胞質ウイルスセンサーRetinoic acid-inducible gene-I (RIG-I)様受容体の発現は放射線による影響を受けないこと,またRIG-I様受容体のリガンドであるpoly(I:C)/LyoVecがヒト肺がん細胞A549細胞の細胞増殖を抑制し,この増殖抑制効果は放射線との併用により増強されることが明らかとなった。これらの結果を踏まえて,平成26年度は, RIG-I様受容体のリガンドpoly(I:C)/LyoVecに対する放射線曝露マクロファージの応答性の評価と,A549細胞に対するpoly(I:C)/LyoVecの細胞増殖抑制機構について検討した。まず,放射線曝露マクロファージのpoly(I:C)/LyoVecに対する応答性を抗ウイルス性サイトカインであるインターフェロンβのmRNA発現により評価した。その結果,放射線曝露マクロファージのpoly(I:C)/LyoVec誘導性インターフェロンβの発現は非照射マクロファージと同程度であったことから,マクロファージのRIG-I様受容体は放射線曝露後も機能することが示唆された。次に,A549細胞に対するpoly(I:C)/LyoVecの細胞死誘導作用を蛍光標識Annexin Vを用いた細胞死解析により評価した。その結果,poly(I:C)/LyoVec刺激によりAnnexin V陽性の細胞死集団が増加した。さらに,X線とpoly(I:C)/LyoVecを併用した場合,poly(I:C)/LyoVec単独またはX線単独と比べて細胞死集団が有意に高かったことから,poly(I:C)/LyoVecによる細胞増殖抑制機構は細胞死誘導に起因することが示された。 以上の結果より,RIG-I様受容体ががん放射線治療の抗腫瘍効果および抗腫瘍免疫増強の標的となり得る可能性が示唆された。
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