MRI撮像シークエンスの中でも、拡散強調画像は近年、癌の発見、診断に有用とされ、様々な領域で臨床応用されている非造影のシークエンスである。拡散強調画像は水分子の熱運動の状態を画像化したもので、生体内の水分子、特に細胞外液腔の熱運動を可視化することが可能である。細胞外液腔の環境は細胞の大きさや密度など組織学的構造の影響を受けている。MRIで計測される拡散は、温度、灌流、イオン勾配などの複数の要因を区別できないので同じくらいの水分子の動きをひとまとめに拡散として扱う。そこでみかけの拡散係数(apparent diffusion coefficient; ADC)という係数が拡散の指標となる。 我々は乳癌での拡散強調画像の有用性,測定方法を明らかにするために,非浸潤癌(DCIS)と浸潤癌の間で拡散強調画像から算出される拡散係数(apparent diffusion coefficient; ADC)が有意に異なることを確認した.浸潤癌のなかでは,ADC値は細胞増殖指数(Ki-Labeling index)と負の相関を示し,低増殖指数群と高増殖指数群の間で有意差があることを確認した. 測定方法としては腫瘤全体のヒストグラム解析を行って,通常の腫瘤内に楕円形のresion of interest (ROI)を置き平均値を算出する方法と比較した.ROI法の平均値はヒストグラムから算出されるパラメータと診断能に変りはなく,十分な方法であるということを確認した.
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