研究課題
若手研究(B)
転写制御因子Pax6は、大脳皮質、海馬、扁桃体、嗅球、視床、小脳の形成にかかわり、胎生期から成体まで神経幹細胞で発現がみられ、その増殖と分化のバランスを調整しており、神経系の発生発達において重要な因子である。ヒトではPAX6の変異により両側大脳半球の連絡繊維である前交連や脳梁の無形成、帯状回、小脳、内側側頭葉、線条体、島の灰白質体積の増加といった脳の灰白質の形態異常、側頭葉の多小脳回と松果体の無形成も呈することが報告されている。それらの大脳の形態異常に関連して出現すると思われる症状、障害として精神遅滞や自閉症、両側大脳半球間の聴覚情報伝達の障害、聴覚および言語ワーキングメモリーの障害、前頭葉機能障害などが示されている。Pax6ヘテロ変異ラットは、社会性の異常や興味の減少といった症状を認め、また幼若ラットが母ラットから隔離されるときに発するマザーコール超音波発声の低下を認める。これらの研究によりPax6が高次脳機能の構築に重要な役割を果たしていることが推察される。本研究では自閉症のモデル動物であるPax6遺伝子の変異ラットに対し、陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography, PET)と核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging, MRI)を用いた非侵襲的なin vivoイメージングを行うことにより、Pax6が高次脳機能の構築にどのように関与しているか明らかにする。Pax6変異ラットと野生型ラットに対し小動物用核磁気共鳴画像法(MRI)によりT2強調画像の撮像を行った。画像データ解析ではvoxel-by-voxel analysisにより脳の各領域の体積の異常を解析し、野生型に比べてPax6変異ラットは大脳皮質の広範な部位の体積が減少していることが明らかとなった。
3: やや遅れている
Pax6遺伝子の変異による大脳の形態異常が広範にわたっているため、今後どのような脳領域や因子に焦点を当てて組織学的解析を行っていくべきか検討を行っている。また陽電子放射断層撮影 (PET)の撮像については準備を進めており、今後撮像を行う予定である。
核磁気共鳴画像法(MRI)を用いたPax6変異ラットの形態異常の結果を踏まえて、その形態異常の原因を組織学的解析により究明したい。また陽電子放射断層撮影 (PET)を用いた脳の機能画像解析により、Pax6ラットにみられる自閉症様の行動異常がいかなる脳機能異常により発現しているかを明らかにしたい。
実験の進捗がやや遅れており、特に動物実験で使用する予定であった消耗品による支出が減少した。やや遅れている動物実験を26年度は進め、そのための消耗品を購入するための支出に繰り越した分を充てる予定である。
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