研究課題
転写制御因子Pax6は、大脳、小脳の形成にかかわり、胎生期から成体まで神経幹細胞で発現がみられ、その増殖と分化のバランスを調整しており、神経系の発生発達において重要な因子である。ヒトではPAX6の変異により精神遅滞や自閉症、前頭葉機能障害などが生じる。Pax6変異ヘテロ接合ラットは、社会性の異常や興味の減少といった症状を認め、また幼若ラットが母ラットから隔離されるときに発するマザーコール超音波発声の低下を幼若ラットに認める。これらによりPax6が高次脳機能の構築に重要な役割を果たしていることが推察される。本研究の目的は、Pax6変異ヘテロ接合ラットに対し、小動物用核磁気共鳴画像撮像法(magnetic resonance imaging以下MRI)を用いた脳の形態解析および組織学的解析により、Pax6が高次脳機能の構築にどのように関与しているか明らかにすることである。MRIを用いて生きている変異型ラット29匹、野生型ラット31匹の脳の形態画像を撮像した。voxel-by-voxel analysisとregion-of-interest analysisを用いた形態解析により野生型に比べてPax6変異ヘテロ接合ラットは大脳皮質、海馬、扁桃体、視床、中脳、脳梁の体積が減少していることが明らかとなった。今後MRIにて体積の減少を認めた脳領域に加えて、先行研究で形成にPax6の関与が明らかとなっている小脳、嗅球について組織学的解析を進め、それらの部位における微細構造の異常について明らかにしたい。
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