研究課題
本研究では、ヒトがんにおける放射線治療反応性と関連する遺伝子変異プロファイルの同定を目的とした。具体的には、高速シークエンサを用いたターゲットキャプチャシークエンス法により、放射線治療を受けた子宮頸癌患者の治療前腫瘍生検検体由来DNAからの既知がん関連遺伝子変異の検出を試みた。平成27年度は、前年度に引き続き前向きコホートの症例集積を進め、取得した腫瘍生検検体のホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE)サンプルから順次DNAを抽出した。後ろ向きコホートのFFPEサンプルから採取されたDNAをIon AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2 (Thermo Fisher)で解析した。数症例のDNAを用いたパイロット試験により、同キットを用いてFFPE抽出DNAから遺伝子変異情報を取得する解析パイプラインが機能することが確認された。同解析から得られた50種類の既知がん関連遺伝子の変異情報と臨床経過とを比較検討した結果、放射線治療に抵抗性を示した症例においてFGFR4変異、SMAD4変異など子宮頸癌では典型的でない遺伝子変異が抽出され、これらは放射線治療反応性と関連する遺伝子変異プロファイルの一因であることが示唆された。現在、これらの候補遺伝子変異について、培養細胞実験系で取得された放射線感受性情報を検証中である。また、放射線感受性に関連する既報告および臨床経験の分析から得られた知見をまとめ、2報の論文として発表した。本研究の3年間を通して、後向きコホート約180例、前向きコホート約60例を集積し、子宮頸癌臨床検体の遺伝子変異解析 (クリニカルシークエンシング)のパイプラインが確立された。FFPE抽出DNAは現在、Ion AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を用いて順次解析中である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 11305
10.1038/srep11305
Clinical Case Reports
巻: 8 ページ: 710-713
doi: 10.1002/ccr3.322