研究実績の概要 |
H28年度、子宮頸癌に対する放射線治療における体外照射と子宮腔内照射の効果を統合した3次元生物効果線量(BED)分布の解析を継続し、解析モデルにおける腫瘍に対する生物効果線量と直腸や膀胱などの正常組織における生物効果線量の線量体積ヒストグラム(DVH)解析を進めた。これまでは本邦で標準的に行われている中央遮蔽という手法を用いた体外照射の放射線量の評価は困難と考えられていたため、本邦からの過去の研究報告でもその線量寄与は無視され報告されてきたが、本研究の解析によりその詳細な数値が明らかになった。この成果は、米国小線源治療学会(American Brachytherapy Society)の学会誌であるBrachytherapy(IF:2.088)に掲載された(Tamaki T, et al. Brachytherapy. 2016 Sep-Oct;15(5):598-606.) H28年には国際放射線単位・測定委員会(ICRU)から子宮腔内照射の線量評価や報告手法などを世界的に標準化するためのICRU Report 89が発行された。その報告の中では「中央遮蔽を用いる場合の線量評価に関してはTamakiらの研究を参考にする」と記載され、本研究で発表した論文(Tamaki T, et al. J Radiat Res. 2015 Sep;56(5):804-10.)が引用された。これは本研究の報告が放射線治療の線量評価の標準化に大きく貢献したことを示している。 本研究では、研究責任者の転勤が続き、所属施設に特有な粒子線治療の解析や子宮頸癌以外の症例の解析が困難になったが、その反面、強度変調放射線治療における生物効果線量評価や超音波画像を用いた場合の線量評価などの研究を進め、その成果を国内外の学会で継続し、日本癌治療学会学術集会では優秀演題賞の受賞などにも繋がった。
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