研究課題
遊走能の放射線照射による影響とROCKの関連について、その特異的阻害薬であるY27632を併用し、インビトロ環境で探索した。最初に炭素線照射による細胞増殖能への影響を確認するため、WST-1アッセイを行った。この実験ではヒト肺腺癌細胞A549が炭素線照射後から72時間以降において、非照射群に比較して有意に増殖能が低下した。そのため増殖能による影響を最小にするため、遊走能に関する実験は炭素線照射から48時間以内の現象について検討した。次に炭素線照射による遊走距離の変化を観察するためにwound-healing-assayを行った。炭素線を照射した細胞群では非照射の細胞群と比較して、照射後48時間の遊走距離が有意に長く、さらに高線量を照射した細胞群では遊走距離が長くなっており、炭素線が遊走能を増強することが示唆された。また、細胞骨格への影響を観察するため、Fアクチン染色を施行すると、炭素線被照射群と比較して、炭素線を照射した細胞群では細胞遊走時に見られる細胞骨格変化の一つである突起形成の出現率が有意に高く、この結果から細胞形態学的にも炭素線照射が遊走能を亢進させる事が示唆された。さらにRhoファミリー蛋白のシグナル伝達、とくにROCKの役割に注目して精査を進めた。すると、炭素線を照射された細胞群においてROCKの下流に位置するミオシン短鎖(MLC)のリン酸化を確認することができた。さらに、wound-healing-assay施行時に、ROCKの特異的阻害薬であるY27632を併用すると照射後48時間で有意に長くなっていた遊走距離がコントロール群と同等となり、炭素線によって増強された遊走能を抑制していることが示唆された。上記内容をJournal of Radiation Researchに論文発表し採択された。
平成27年6月 15th International Congress of Radiation Research(国際放射線研究会議)において本研究内容で Excellent Poster Award 獲得
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