研究課題/領域番号 |
25861072
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
武者 篤 群馬大学, 重粒子線医学推進機構, 助教 (60637122)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | Hsp90阻害剤 / 炭素線治療 |
研究概要 |
重粒子線(炭素線)治療は制御が困難であった悪性腫瘍に対し、治療成績の向上が期待される治療法と考えられる。しかし、進行癌においては、炭素線治療のみでは進行癌の根治は難しいことが予想される。そこで我々は、癌の全身制御という見地から化学療法併用炭素線治療を考えた。癌細胞において発現増加が認められているHsp90に着目し、その阻害剤であるHsp90阻害剤を局所効果良好な炭素線に併用することとした。当該申請者はこれまでに、頭頸部扁平上皮癌細胞において、Hsp90阻害剤(17-AAG)とX線の併用により抗腫瘍効果が増大するが炭素線は併用効果が見られず、炭素線は単独でも十分な抗腫瘍効果を示すこと、併用時の上乗せ効果の違いはX線・重粒子線照射後のDNA修復機構の違いが理由の一つであることを見出した。当該申請者はこれまでの研究成果を発展させて、局所効果のみならず、癌細胞の転移能・遊走能の制御変化について調べ、放射線(X線と炭素線)とHsp90の関与について明らかにすることで、全身制御を狙った放射線増感剤の開発に有効となる成果が期待できると考え、本研究の着想に至った。頭頸部扁平上皮癌細胞はX線及び炭素線照射群で線量依存性に遊走する細胞の割合が減少傾向にあり、照射によった低下傾向が見られた。また、17-AAGを併用することにより、X線及び炭素線照射群共に更なる低下傾向が見られた。高線量になるに従い、併用の有無による差が減少している傾向にあるので、低線量域にて詳細な検討を施行中である。次年度はHsp90の発現量や、細胞周期に関与するタンパク質の発現量、そして、シグナル伝達系(MAPKシグナル伝達経路)のシグナル伝達関連タンパク質の発現量の違いによって、併用による抗腫瘍効果と抗転移効果の解析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では検討する細胞として頭頸部扁平上皮癌細胞の他に腺癌系の細胞も検討する予定であったが、現段階で検討できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
ウェスタンブロット法にて、Hsp90の発現量や、細胞周期に関与するタンパク質の発現量、そして、シグナル伝達系(MAPKシグナル伝達経路)のシグナル伝達関連タンパク質の発現量の違いによって、Hsp90阻害剤と炭素イオン線との併用による抗腫瘍効果と抗転移効果の解析を継続して行う。癌細胞では、Hsp90の発現が増加しているとの報告があり、Hsp90のclient proteinには、浸潤や転移に関与するタンパク質も報告されていることから、17-AAGとの併用により癌細胞では抗転移効果の併用効果が生じやすいと予想される。一方、炭素イオン線と17-AAGの併用効果は、これまでの報告が少ないことから、十分な線量・濃度の検討が必要であると考えられる。タンパク質発現の違いで何らかの差が発見できたとすれば、そのタンパク質を阻害しtranswell chamber assayとwound healing assayにて有意に遊走能・浸潤能の低下があるか検討することによって、癌細胞における遊走能・浸潤能のキータンパク質を同定する予定である。 さらに、頭頸部癌患者の手術標本を用いて蛍光免疫染色を行い、Hsp90発現の臨床的側面(予後への影響や局所制御など)について検討する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初計画した使用予定の細胞を使用できていないため、細胞培養等の消耗品に使用予定の金額が繰り越された。 細胞培養等に使用する消耗品に使用予定。
|