経血管インターベンションを用いて薬剤を局所の臓器に輸送するシステムは、標的部位に限局した高濃度の抗癌剤や分子標的薬剤の到達を可能とする手法であり、薬物効果を最大化し、副作用を最小化できる利点を有し、今後の発展に強い期待が寄せられている。また癌を初めとした一般的な腫瘍では腫瘍内の血管は透過性が亢進しており血管内皮障壁(バリアー)機能が低下しているとされる。このため、血漿の血管外漏出により間質圧が上昇し、血液循環が妨げられている。本研究では動物モデルを用いて、血管バリアー機能のコントロール機能の解明を目指す。 まず本研究においては、ウサギに対する大腿動脈アプローチの血管造影手技を確立した。本手技は熟練を要するものの、低侵襲に標的臓器へカテーテルを導入することが可能であった。また、細径カテーテルを用いる事により肝動脈の可及的末梢の選択を行う事ができた。肝臓を標的とした血管バリアー機能の評価を行うに当たって、定常状態での薬剤投与による影響を評価した。定常状態では、FITC-デキストラン投与によるFITC-デキストランの血管外への漏出は確認できなかった。NOを放出するNOドナーであるニトログリセリン、SNP、また血管透過性を亢進させるヒスタミン、PAFの投与下における血管透過性の評価をエバンスブルーを用いて行ったが、非癌肝では透過性の更新ははっきりしなかった。一方、VX2腫瘍モデルにおいては、腫瘍周囲肝実質において、ニトログリセリン投与下で血管透過性の著明な亢進が確認できた。本研究により、腫瘍の存在が周囲の正常組織の血管透過性に何らかの影響を与えている事が示唆された。
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