研究課題/領域番号 |
25861080
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
多賀 峰克 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (00529349)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腎癌 / 分子標的薬 / 早期治療効果 / PET / FLT |
研究概要 |
進行性腎癌に対する分子標的薬の早期効果判定は困難である。最近、FDG PETによる腫瘍の機能性評価が推奨されているが、FDGが低集積を示す腎癌が多いことや、FDGが炎症組織に集積するために、その治療効果判定は必ずしも容易ではない。本研究では、腎癌に対する分子標的薬の早期治療効果の評価に18F-fluorothymidine(FLT) PETが有用かを動物実験モデルを用いて検討した。本研究の目的は、①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETよりすぐれているか、について検討することにある。 ヒト培養腎癌細胞をマウスに移植し、一定の大きさになったところでスニチニブ(VEGFR-TKI)の投与を開始した。投与開始前後、経時的にFLTの腫瘍集積をガンマカウンターおよび動物用PETを用いて測定した。腫瘍組織は免疫組織学的に血管内皮細胞密度や細胞増殖能、アポトーシスインデックスを評価した。これらの結果と、FLT集積を比較した。 ACHN(非淡明細胞性腎細胞癌株)ヌードマウスに皮下移植し、スニチニブの経口投与を開始した。スニチニブ投与開始前、および開始後にマウスにFLTを投与し、マウスを屠殺して腫瘍内のトレーサー集積を測定した。摘出腫瘍組織を免疫組織学的に染色し、血管内皮細胞密度(CD34 index)、細胞増殖能(PCNA)、アポトーシスの状態(apoptotic index)を算出した。トレーサーの集積と分子標的薬投与後の腫瘍組織の細胞増殖能や血管密度との関連性を調べた。 マウス移植細胞はコントロール群と比較してスニチニブ投与群では腫瘍の増大は僅かで、腫瘍径はスニチニブ投与2週間で有意差を認めた。一方、FLTはスニチニブ投与群では1週間で有意にトレーサー集積が低下した。apoptosisに関してはsunitinib投与1週間では両群間に有意差は認めなかったが、PCNA indexはsunitinib投与1週間で有意に低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における研究目的として①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETよりすぐれているか、と設定した。下記の具体的な目標にしたがって研究を実施し、成果を得た。 ACHNをヌードマウスの皮下に移植し、スニチニブ群には40㎎/㎏/dayのスニチニブを、コントロール群には溶媒をそれぞれ14日間連続経口投与した。 その結果、腫瘍の増大率は7日目までは2群間に差を認めず、14日目で有意差を認めた。同様のモデルを作成し、スニチニブを投与した。 スニチニブ投与終了後に、FLT 50µCiをマウスの尾静脈より投与し、1時間後にマウスを屠殺し、腫瘍へのFLTの集積をガンマカウンターを用いて計測した。 また、摘出腫瘍組織は免疫染色によりアポトーシス、細胞増殖能、血管密度の評価をおこなった。 結果は、TUNEL染色によるアポトーシスの評価は、スニチニブ投与開始後、2日目、5日目、7日目とも2群間に有意差を認めなかった。PCNA染色による細胞増殖能の評価では、すでに7日目において有意に低下していた。腫瘍へのFLT集積はスニチニブ投与後2日目までは有意差を認めず、7日目で有意な低下を認めた。この結果はPCNA染色の結果とも一致した。スニチニブの有する新生血管抑制作用を評価する目的で、CD34免疫染色を行ったが、スニチニブ投与開始後7日目までにおいて有意差を認めなかった。 本研究の最終研究目的である①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETよりすぐれている、に対する答えは、2年間の研究期間を経て結論が得られるが、本研究が予定通り開始され、計画通りの実施手順によって結果解析が開始されたことは、研究開始1年目として十分な目標到達であったと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始1年として進捗状況としては、ほぼ予定通りの計画が達成されている。今後も、本研究における研究目的として掲げた①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETよりすぐれているか、の各項目について達成するために、以下の通り研究を推進していく予定である。 平成26年度は動物用PET装置を用いて、マウス移植腫瘍に対するスニチニブの早期治療効果をPET装置を用いて、トレーサーの集積の変化として評価できるかどうかの動物実験を実施する予定である。動物用PET装置は高エネルギー医学研究センター内にある装置を用いる。 実験の具体的な計画としては、マウスにACHNを皮下移植し、一定の大きさに成長したところで、スニチニブの経口投与を開始する。スニチニブ投与開始前後にマウスにFLTを投与し、動物用PETスキャナーでマウスの全身像を撮像する。得られた画像を解析して、腫瘍内のトレーサー集積をSUV解析によって評価する。上記で用いた摘出腫瘍組織をホルマリン固定、パラフィン包埋後にCD31、Ki-67、TUNEL法で免疫組織学的に染色し、血管内皮細胞密度(CD341 index)、細胞増殖能(PCNA)、アポトーシスの状態(apoptotic index)を算出する。これらの結果とPET画像のSUV解析によって得られたトレーサーの腫瘍集積結果を比較し、PETによるトレーサー集積の解析の結果と分子標的薬投与後の腫瘍組織の細胞増殖能や血管密度との関連性を調べる。また、摘出腫瘍組織をRT-PCR法を用いてTK1のmRNA発現量を評価し、FLTの腫瘍内集積の結果と比較する。 本研究の最終研究目的である①FLT PETの腫瘍集積と分子標的薬の治療効果の発現の間に関連があるか、②FLT PETによる分子標的薬の早期治療効果評価はFDG PETより優れているか、に対する答えは、2年間の研究期間を経て結論が得られる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はFLT合成が極めて順調であった。そのため、FLT合成に必要な薬剤を購入する費用、合成に必要なプラスチック器具類等の購入が予定より少なく、かかる費用を少なくすることができたため、次年度に繰り越して使用する。 平成26年度の研究実施計画に基づいて、研究の実施に必要な①実験用動物、細胞培養器具、薬剤合成に必要な薬品の購入に使用する。また、研究の遂行に必要な情報収集のために、国内外の関連学会に出席するための旅費に使用する予定である。
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