通常使用されている拡散強調(Diffusion weighted image;DW)画像は水分子のブラウン運動を信号変化として表現した画像で、「生体内の拡散は正規分布する」と言う仮定の基に成り立っている。しかし、生体内では細胞膜や細胞壁などの微細構造によって制限拡散になってしまうため、生体内の拡散を正確に表現しているとは言い難い。そこで生体内の水分子の拡散が正規分布していないときの表現方法としてQ-Space Imaging(QSI)解析が考案された。これは細孔材料の構造を分析するために考案された手法であったが、Magnetic Resonance (MR)画像に応用し、現在では臨床応用に向けて研究が進められている。 本研究の目的はreadout segmentation of long variable echo-trains(RESOLVE)シーケンスで得られた拡散強調画像にQSI解析を行い、客観的な評価を行うための定量パラメータであるDiffusional kurtosis Imaging(DKI:拡散尖度画像)の有用性を検討することである。 本研究に同意の得られた5名の健常ボランティアの頭部を対象とし、拡散尖度値の整合性をsingle shot echo planar imaging(SS-EPI)シーケンスで得られた結果と比較することによって検討した。測定箇所は大脳白質(前頭葉・側頭葉・後頭葉)、視床、橋、小脳白質、側脳室内で行い、統計的な有意差検定を行った。 その結果、ほとんどの測定箇所でRESOLVEシーケンスとSS-EPIシーケンスで得られた拡散尖度値に有意な差は認めなかったが、側頭葉白質のみ有意な差を認めた。 RESOLVEシーケンスは撮像時間が延長してしまう傾向があるが、分解能が高く、歪みの少ない画像を得ることが出来るため臨床的意義は非常に大きいと思われる。
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