進行肝細胞癌の治療においては現在肝動脈化学塞栓療法が主治療となっているが、経口投与が可能な血管新生阻害薬(ソラフェニブ)が有望な治療となりうると期待されている。ソラフェニブの経口投与と肝動脈の塞栓術を併用すれば、抗腫瘍効果が相乗的になる可能性があり、より効果的な進行肝細胞癌の治療法になることが期待される。ウサギ肝腫瘍モデルを用いた前年度の研究において、ソラフェニブの経口投与に動脈塞栓術を併用した場合、それぞれ単独で治療した場合と比較して、より強い抗腫瘍効果を示す結果を得ることができた。今年度の研究ではソラフェニブ経口投与と動脈塞栓術を併用する時期を変えて治療を行い、画像・病理学的評価によりそれぞれの治療群での腫瘍増大率と血管増生の程度の違いを評価し、併用の最適な時期を比較検討した。肝に腫瘍を移植したウサギを以下の4群に分類しそれぞれの方法で治療を行った(Group1:肝動脈塞栓後ソラフェニブ経口投与、Group2:ソラフェニブ経口投与開始一日後に肝動脈塞栓、Group3:ソラフェニブ経口投与中間に肝動脈塞栓、Group4:ソラフェニブ投与終了後に肝動脈塞栓)。ソラフェニブの経口投与は毎回全身麻酔施行後、胃までネラトンチューブを挿入して行う必要があり、ウサギへの身体的負担が大きいと考え、当初の計画を変更し、投与期間を2週間→1週間へと短縮し、一回の投与量を増やすこととした。結果としてはGroup3やGroup4と比較しGroup1やGroup2で腫瘍増大が抑えられる傾向となった。血管増生についてはそれぞれの群で有意な差は得られなかった。以上の結果よりソラフェニブと肝動脈塞栓の併用は効果的であり、かつ動脈塞栓後にソラフェニブ投与開始、あるいはソラフェニブ投与開始後早期に動脈塞栓を併用することでより強い抗腫瘍効果を発揮する可能性が示唆された。
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