研究課題
本研究は、CTおよびH215O-PET/CT(水PET/CT)を用いて、腫瘍血流を定量解析することでBevacizumab (Avastin®)をはじめとする化学療法に対する治療有効性の予測および治療効果判定法を検証し、血流イメージング法を確立することである。平成26年度は、昨年度に準じて、同様の手順で、画像データの収集および腫瘍血液灌流量の評価を行う。1.画像データの収集:当施設における非小細胞肺癌の化学療法前(Bevacizumab使用群、非使用群)の患者を対象とし、化学療法の前後において、水PET/CTとperfusion CTの撮像を行うことを目指したが、昨年と同様に患者が被曝増加を懸念する点などから、水PET/CTのみを行うこととした。新たに11症例(Bevacizumab使用群6例、非使用群5例)の検査を行った。本研究で、重要視している水PET/CTの検査タイミングであるが、予定通り化学療法開始前1-7日前、化学療法後1-3日後に施行できている。また、撮像法に関しても、研究実施計画書に記載した通りの方法を実施できている。2.採血と血清VEGF測定:PET/CT検査前に放射性薬剤H215Oを注入するルートより事前に5mlの静脈血を採取した。昨年度と同様に、承諾を得られた症例からは、血漿および血清の両方の測定を行っている。ただ、臨床業務の都合上、専用測定ELISAキットによる測定時間を割くことができないため、SRLに外注検査を出すことで、測定進行中である。3.腫瘍血液灌流量の評価方法:水PET/CT施行後に、症例毎に腫瘍血液灌流量を測定し、エクセルデータとして保存中である。
2: おおむね順調に進展している
画像データの収集であるが、従来は水PET/CTとperfusion CTの同時撮像を行うことを目指したが、対象患者は進行肺癌患者が主体であることや近年の被曝増加を懸念する点などから、昨年度と同様に、同時に両方の検査の承諾を得ることが難しいのが現状である。また、化学療法のスケジュール、および水PET/CTの為の薬剤である放射性薬剤H215Oの合成スケジュールを合致させる難しさもあり、昨年度と同様に11症例(Bevacizumab使用群6例、非使用群5例)の水PET/CT検査のみを行っている。現在実施済みの検査においては、腫瘍血液灌流量測定もできている。昨年の報告書に記載した通り、水PET/CTデータを用いて持続動脈採血からの血中放射能濃度を実測入力関数とした血流マップとPET画像上の大動脈に設定した関心領域からの非侵襲的入力関数を用いた血流マップを作成し、両者を比較・検討を行った結果、非侵襲性的な方法を用いた場合でも血流値の計測が可能であり、その値(0.16-0.25ml/cm3/min)が、これまでに報告されている血流値に相当する値であることを確認できた。
Perfusion CTの撮像が困難であったため、各モダリティを用いた場合の化学療法の効果判定は難しいが、水PET/CTの際に撮像したCT画像のみを用いた場合の治療効果判定と、水PET/CTを用いた場合の治療効果判定を比較し、また、測定可能であった血漿および血清VEGF値、患者予後(再発・死亡)との相関性を検討する。同時に、化学療法の効果予測に有用な画像データ上のパラメーターの有無についても統計的解析を加えて検討する予定である。
平成25年度の半年間において、自身の海外留学が重なったため、主として平成25年度分の国内および外国旅費として計上していた400,000円相当の金額を使用することができなかったため、今年度に繰り越しとしていたが、今年度に他の研究課題の報告などで国内・海外出張が重なったこと、および本研究の症例数が当時予想していたものより少なかったことにより、VEGF計測のために保留していた(1件あたり約3万円使用)'その他(物品費や謝金の計上金から運用)'の経費が余った事、また、症例不足により、その解析や結果報告をまとめることが出来なかった事による出張費の未使用などが理由である。
次年度は、本研究の詳細な解析を行い、その研究報告について、国内・国外の学会で報告予定である。現時点で投稿可能なRSNA 2016には演題をすでに投稿済みの状態である。また、本研究に関する新しい知見を得る為にも、積極的に関連のある国内学会や海外学会に参加する予定である。
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