研究課題
今回の研究目的は、小動物用PET-MRI装置によるマウスに対する放射線全身照射前後の[18F]FLTの全身骨髄に対する分布の画像化と解析、病理学的標本との比較により、放射線の線量と治療前後の[18F]FLTのSUVの変化及び病理学的変化の相関を検討することである。まず臨床的にCTで同定した骨盤骨に対するパラメータが有意に骨髄抑制に相関していることを見した。骨盤骨のV40(40 Gy以上照射される骨盤骨の体積)が49.2%を超える症例のグレード3以上の骨髄抑制発生率が45%なのに対して、49.2%未満の症例のグレード3以上の骨髄抑制発生率は15%に抑えられた(p = 0.02)。この成果を2014年9月の米国放射線腫瘍学会ポスターセッションで発表した。次に、子宮頸がん術後照射においてIMRTで治療した32例と3次元照射で治療した30例を比較したところ経過観察期間中央値40か月で、3年全生存率、局所・領域制御率、無増悪生存率は、IMRT群でそれぞれ92%、95%、92%、3次元照射群で85%、82%、70%と有意差を認めなかった。また腸管の有害事象はIMRT群で有意な減少が認められた。一方、IMRT群で骨髄抑制の頻度が高かった。この成果を2015年5月の国際放射線研究会議(京都)に採択され発表予定である。また現在英文誌に投稿している。これらの成果から照射される解剖学的な骨盤骨の体積と骨髄抑制には強い相関があることが分かったので、今後は生物学的なパラメータとしてFLT-PETでの線量-体積パラメータと骨髄抑制の相関を検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究で、CTでの骨盤骨を用いた線量-体積ヒストグラムと骨髄抑制は非常に相関し、さらに臨床的にパラメータを低減させることにより骨髄抑制が低減させることの可能性が高まった。今後はFLT-PETを用いた臨床試験にて生物学的な指標を用いて明らかにすることができる。
今後の研究目的は、FLTを用いて、活動性の骨髄を同定し、小動物用PET-MRI装置によるマウスでの検討及び、臨床でのFLT-PETを用いてのIMRTにより骨髄抑制を減少させるためのパラメータを検討する予定である。
本年度は研究の前提となる臨床研究を行っていたために、申請している動物実験を行えていなかった。このことが次年度使用額が生じた理由であり、次年度に動物実験を行い、経費を用いる予定である。
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