研究実績の概要 |
本研究では,腫瘍細胞の時間放射線生物学的な応答特性を考慮した放射線治療計画法の開発を行った.今年度は,線量不均一性とα/β値の変動に伴う照射位置誤差と最適マージンの関係,臨床治療計画(前立腺がんに着目)での線量不均一性,細胞不均質性に伴う腫瘍および正常組織への反応予測を行った. 時間放射線生物学モデルを用いた最適マージンの解析では,中心部に1cm大の腫瘍を模擬したデジタルファントム(20cm四方)を用い,多門照射を想定して線量分布が均一な状態を仮定し,照射野および腫瘍の位置を変化させて,移動量,照射野,腫瘍制御確率(TCP)の関係を導出し,TCP90%,95%,99%に必要な最小マージンを探索した.また,α/β比と線量分割の違いが及ぼす影響を解析した.加えて,前立腺がんVMAT治療計画にて,線量不均一性,細胞不均質性,線量分割の違いがTCPおよび膀胱,直腸への副作用発生確率(NTCP)へ及ぼす影響を解析した. 照射位置誤差の系統誤差(Σ)に対する最適マージンは,同一処方線量ではα/β比が小さいほど増大し,処方線量が高いほど減少することが予想され,腫瘍形状によっても異なり,最適マージン式は一元的に決定されないことが示唆された.また,臨床治療計画での解析から,細胞不均質性に伴うα/β比,TCD50,γの変動は,多分割照射に比べて寡分割照射では,TCPの不確かさが増える要因となることが示唆された.また,回復・再増殖パラメータの考慮から,細胞不均質の影響を受けると仮定した場合,多分割照射では従来の週5日照射より週6日,週7日照射の方が腫瘍のTCPは増加し,直腸・膀胱のNTCPの増加も軽微であることから,従来治療の延長として治療効果改善が示唆された.寡分割照射では,再増殖の影響が減少する一方,細胞不均質性に伴うTCP/NTCPの不確かさが増加し,処方線量最適化の必要性が示唆された.
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