ダイナミックCT画像は経時的に形状がわずかに変化してしまうために、その形態を補正する位置あわせ処理が必要である。しかしCT装置上で提供されている従来法では位置あわせ法では十分な精度が得られないことがあった。この問題を、自由度の低いのB-Spline変形をもとにした非剛体位置あわせ法を適用することで解決した。ダイナミックCT画像は、時相間の形態変化はさほど大きくないため、自由度の高い位置あわせを行うとかえって間違った解に収束してしまう可能性が生じるが、変形の自由度をあえて低くすることでこの問題に対応した。位置ずれの程度に応じて、変形自由度を制御する変形格子の数を3(ほぼ位置ずれが無い)から9(局所的な位置ずれが大きい)程度に設定することでロバストな位置あわせ結果が得られた。 冠動脈に有意狭窄がありかつダイナミックCT検査にエントリーされる症例が少なかったため、さらに詳細な検討を行うべく広島大学病院に導入されている3Dプリンターを用いて高精度な冠動脈モデルを造形した。冠動脈モデルは左冠動脈を模し、起始部(直径4mm)および分岐した前下行枝と回旋枝(各3mm)、さらに末梢の分岐枝(2mm)を、0・25・50・75%の4段階の狭窄度となるよう設計した。造形した冠動脈モデルをダイナミックCTスキャンすることで得られた4D CT画像を、開発したソフトウェアで解析することで流速や圧格差を算出した。ファントムを用いることで位置ずれのない理想的なデータが得られるため、造影剤が重力の影響を受けるなどの新たな問題点も明らかとなった。 ファントムによる研究成果は2017年1月に開催される医用画像研究会にて報告し、十分な数(20例程度)の有意狭窄のある臨床症例のダイナミックCTデータが得られた段階で、結果をまとめて論文誌(Investigative Radiologyを予定)に投稿する。
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