研究実績の概要 |
本研究では、7テスラ高解像度拡散MRイメージング法を確立し、早期認知症患者を縦断的に検討することで、認知症を超早期に高精度かつ無侵襲に検出・評価する技術基盤の確立が目的である。昨年度は、3テスラ高解像度拡散テンソル画像の解析により、ADに移行するMCI患者の海馬傍回帯状束の微細な変化を検出することができ、早期診断に対して有用であることを確認した。本年度は、7テスラ高解像度拡散イメージングの確立を行っている。また並行して、PDでは認知症を合わせ持つ疾患があり、早期鑑別診断が十分確立していないパーキンソニズムを呈する運動失調症を対象に、3テスラ拡散尖度画像(DKI)を用いて基底核・脳幹・小脳の微細構造変化の検出および鑑別診断の可能性について検討した。発症早期のPD, MSA, PSPを対象に、DKIの元画像を撮像し、独自に開発したソフトウェアを用いて、平均拡散尖度(MK), 拡散異方性(FA), 平均拡散能(MD)マップを算出した。早期PD群に比し、MSA-C群では橋横走線維・中小脳脚のMK値など、PSP群では深部灰白質・中脳被蓋・上小脳脚・小脳など広範囲に有意差を認めた。また、従来のMR parkinsonism index (MRPI)に対応する新たな定量指標としてDKIを用いたdiffusion MRPI (dMRPI)を考案し、早期診断基準としての可能性を検証した。dMRPI-MK値のみが、早期PD, MSA, PSP間の全てにおいて有意差を認め、かつ高い感度・特異度(80%以上)を示した。DKI定量解析によって、発症早期の運動失調症における脳幹や小脳脚の軽微な変化を検出することができ、中でもdMRPI-MKは早期PD, MSA, PSPを従来の定量指標に比し高い感度・特異度で識別できることから、早期診断基準の一つとして有望であると示唆された。
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