放射線治療は、腫瘍に高い線量を投与し十分な殺細胞効果を得ると同時に、正常組織への被曝を最小限に抑えることで有害事象を低減することができる。現在広まりつつある高精度な照射法は近接する正常組織への線量を低減できるが、実際に投与される線量分布は患者の設置精度や臓器の移動の影響を受けやすいため、投与後の線量分布を測定できることが望ましい。本研究では、患者の位置確認に一般的に用いられるElectronic Portal Imaging Device (EPID)を線量測定ツールとして活用することで、治療中の患者体内の線量分布を簡便にリアルタイムで再構成することを目的とした。 本研究で構築したシステムは、体内を透過したX線をEPIDによって画像化し、この画像をもとに体内で付与された線量分布を計算により求める。照射したX線が不均質部を含む体内を透過してEPIDに到達し画像を構成するまでの全過程にモンテカルロシミュレーションを導入する初の試みにより、治療ビーム出力時の状況での体内線量分布を正確に再構成することができた。様々な模擬人体ファントムを用いて構築したシステムの検証を行い、ビーム軸に平行な面で実測値との比較を行った。結果はガンマ解析で評価した。pass rateは95%以上であり、ファントム内の線量分布を高い精度で再構成することに成功した。このシステムを臨床応用することで治療精度の評価が可能となり、また必要に応じて治療計画の再検討を行うことで治療成績の向上および有害事象の低減につながる。
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