本研究は、手術不能な原発性肝臓がんおよび転移性肝臓がん(以下、肝臓がん)に対する革新的な門脈逆流式閉鎖循環下肝灌流療法の基礎実験であり、本研究の目的は肝腫瘍モデルとしてウサギVX2腫瘍を用いて門脈逆流式閉鎖循環下肝灌流療法を行うことで、当治療法の安全性と腫瘍内薬物動態ならびに治療効果を評価し臨床応用に繋げることにある。 平成26年度は、前年度に引き続き担がんウサギ作成および門脈逆流式閉鎖循環下肝灌流療法回路を確立するための実験を行った。特に担がんウサギモデルの作成は当初比較的安定してVX2がんの肝臓への移植が行えたものの、その後,腹腔内播種やウサギの死亡が続いたため、安定したVX2肝癌ウサギの作成を得るために、繋代および肝癌ウサギ作成に時間を費やす必要があった。また、回路作成では、VX2腫瘍植え込みの際に生じる癒着により門脈の露出が困難で、また閉鎖循環作成のためのカテーテルが血管径に比して大きく、閉鎖回路の作成に難渋した。これらから、安定して門脈逆流式閉鎖循環下肝灌流療法をVX2担がんウサギに作成することは非常に困難であった。しかしながら、VX2腫瘍モデルの作成ノウハウは得難く、また閉鎖回路作成などで得られた知見・データをもとにVX2担がんウサギにおける閉鎖循環下抗がん剤灌流療法に関する学会発表を計画している。また、本研究と平行して行われた閉鎖循環下抗がん剤灌流療法の基礎検討は世界的権威のあるヨーロッパのIVR学会(CIRSE)で最高賞を受賞することが出来た。
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