核医学検査における単光子放射断層撮影(SPECT)は、放射性医薬品を投与された被検者から放出される光子を体外計測して体内放射能分布を画像化する。一般臨床検査におけるSPECTの目的は、脳血管障害や虚血性心疾患の診断であるが、近年では認知症の早期診断 や治療薬開発におけるバイオマーカの画像化としても世界的に着目されている。しかしながら、SPECT は測定原理上、量子雑音が多く、かつ他の医療画像と比較して空間分解能が低いため、短時間(高感度)で高い空間分解能を有する手法の研究開発が極めて重要である。 本研究では、特別なハードウェアを用いずに良質な画像を作成できるHybrid SPECT画像再構成法を研究開発した。本研究期間は3年間であり、①補間投影データ法の最適化および汎用型二検出器ガンマカメラ装置における年間感度変動の調査、②投影データごとに動的に緩和係数が変化する逐次近似画像再構成法の開発、③ファントムを用いた汎用型二検出器ガンマカメラ装置での検証、から構成された。平成27年度は「ファントムを用いた汎用型二検出器ガンマカメラ装置での検証」について研究を遂行し、これまでに得られた計算機シミュレーションによる数値ファントムの結果も含めて欧州核医学会でその成果を報告した。なお、論文については鋭意準備中である。 前年度の研究実績で動的緩和係数を投影データごとに最適化した画像再構成法を有効性を示したが、実測した投影データにおいてもその有効性が示唆された。一方で、実機を用いた検討では、散乱線補正の精度が本研究課題に大きく影響することも示唆され、新たな研究を行う重要性があると考えられた。 約2年半継続調査した汎用性二検出器型ガンマカメラの感度は、本学新棟建設の影響で約1ヶ月間装置を停止させたが、平成26年度の実績と同様に気温に依存し、気温が低くなるほど高感度になる傾向が認められた。
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