研究課題/領域番号 |
25861132
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
吉田 理絵 関西医科大学, 医学部, 助教 (90571167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医歯薬学 / 臨床医学 / 放射線科学 / インターベンショナルラジオロジー / 乳糜胸 / 血管内治療 |
研究概要 |
本研究の目的は、乳糜胸に対する新しい低侵襲治療として、新たなドレナージ術として人工的胸管静脈瘻(胸管-静脈バイパス)を作成し圧較差を利用し胸管内のリンパ液を静脈に導く術式を確立させることである。我々のこれまでの経皮的管腔臓器バイパス術の研究成果を踏まえ、乳糜胸に対する新たな治療法としての経皮的胸管-下大静脈バイパス術を考案した。 平成25年度の研究では、豚におけるリンパ管造影、経皮的乳糜槽直接突刺法および胸管内カテーテル留置の実行可能性を明らかにした。詳細は豚一頭使用し、全身麻酔下にエコーガイド下と外科的リンパ節穿刺の2通りにてリンパ管造影を行った。エコーガイド下に両側鼡径リンパ節を穿刺し、リンパ管造影を行った。鼡径リンパ節ではリンパ節漏洩が多く、充分量の油性造影剤リピオドール注入が困難であった。外科的穿刺法では、鼡径部切開の上、表在リンパ節直接穿刺法と、開腹下腹腔内リンパ節直接穿刺を行った。いずれの方法においても経時的に、透視下にリンパ管および乳糜槽、リンパ系解剖を同定できた。引き続き、得られたリンパ管造影をもとに、経皮的乳糜槽直接突刺法を施行。経皮経腹的アプローチにて胸管を穿刺し、マイクロカテーテルを挿入した。胸管造影を行い胸管と下大静脈圧を測定。しかし、豚は解剖学的に乳糜槽直上に大動脈が位置しており、経皮経腹アプローチでは穿刺経路に大動脈が妨げとなるという問題が判明した。pull through法により経静脈的胸管アプローチを試みたが不可。胸管へアプローチが可能であり、胸管造影の実行可能性を証明した。また、胸管へアプローチできたことにより、経カテーテル的に正常での胸管内圧および中心静脈内圧を測定した。またカテーテルを対外的に連結させることにより、インジコカルミン溶液にて着色し視認性を確保し、対外ドレナージでの液体の動向が、胸管から静脈側へ流動することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究において、豚一頭を使用して、全身麻酔下で左鼡径リンパ節をエコーガイド下にて直接穿刺し、リンパ管造影を行った。経静脈的胸管アプローチを試みたが不可。経皮経腹的アプローチにて胸管へマイクロカテーテルを挿入。胸管造影を行い胸管と下大静脈圧を測定。胸管と下大静脈を体外ルートで接続したバイパスを作成。リンパ液の流れを観察した。引き続き胸管塞栓を行った。胸管塞栓は実行できたが、カテーテルの閉塞により体内バイパスは施行不可能であった。 平成25年度の研究では豚におけるリンパ管造影、経皮的乳糜槽直接突刺法および胸管内カテーテル留置の実行可能性を明らかにした。胸管閉塞乳糜胸モデル(豚)の作成も平成25年度の研究計画であったが、胸管に留置したマイクロカテーテルは操作性の問題が発生し、一時的アプローチとなり、引き続き、胸管損傷および胸管塞栓術まで完遂できなかった。途中経過までは進めることができ来年度以降の問題点を明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究者らは、乳糜を灌流させる経路として、体外ドレナージ経路から末梢静脈へ還流させる胸管-末梢静脈バイパス術では、末梢静脈側へのリンパ液の還流は不良であることを検証している。流出路としての機能には、①胸管と静脈の圧較差、②バイパス路の摩擦係数を下げることが必要であり、最短のバイパス路で静脈圧の低い中心静脈とのバイパス術が適切と仮定している。豚におけるリンパ管造影、経皮的乳糜槽直接突刺法および胸管内カテーテル留置の実行可能性を明らかにする方針である。 平成25年度までの研究成果を踏まえ、今後は胸管閉塞乳糜胸モデル(豚)の作成が可能にするとともに各年度において下記の通り、研究を推進すべく計画および実行中である。 H26:胸管閉塞乳糜胸モデル(豚)にて体外を経由した胸管-下大静脈バイパス術(体外経由内瘻化)での実行可能性を明らかにし、ドレナージ効果を証明する。体外を経由させたカテーテル内のリンパ液の動態を計測し明らかにする。 H27:これまでに得た胸管閉塞乳糜胸モデル(豚)における胸管-下大静脈バイパス術(体内内瘻化)の実行可能性を明らかにする。 H28:H27での胸管閉塞乳糜胸モデル(豚)における胸管-下大静脈バイパス術後の慢性期における体内瘻孔形成の有無、体内人工的瘻孔のドレナージ効果および合併症の有無を明らかにする。 本研究の結果、胸管-下大静脈バイパス術の有効性が明らかになると予想され、さらにこの過程でまだ不明な点が多いリンパ液の還流、静脈との圧較差、胸管の弁の役割なども明らかになると予想される。本研究により、乳糜胸水患者の致死率の改善、経皮的塞栓術での難治性の特発性乳糜胸水の治療法の確立、リンパ液の動態把握、胸管と弁の役割の解明も必要不可欠である。
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