研究概要 |
NAD(P)H:quinone oxidoredactase 1 (略称NQO1) はキノン系化合物の二電子還元を行う酵素であり、多くの固形がんに存在している。また、放射線により比較的短時間で誘導されることが明らかとなっている。そこで本研究では、NQO1を標的に、外部放射線治療との相乗効果を狙った治療応用への展開を可能にするがん内用放射線治療薬剤の開発を実施した。 これまでに、NQO1のmechanism-based inhibitorであるES936をベースにした5-methoxy-1,2-dimethyl-3-[(4-iodophenoxy)methyl]indole-4,7-dione (1)が内用放射線治療の新たな標的となることを明らかにしているが、代謝安定性が悪いことが問題であった。代謝はエーテル部位で起こっており、ヨウ素の電子求引性によりp-ヨードフェノールが脱離し易くなっていると考えられる。そこで、電子供与性のメトキシ基を導入することにより脱離を抑えた3-((4-iodo-2-methoxyphenoxy)methyl)-5-methoxy-1,2-dimethyl-1H-indole-4,7-dione (2)を設計した。非標識体はethyl 5-hydroxy-2-methylindole-3-carboxylateを出発原料として、4段階の反応により3-(hydroxymethyl)-5-methoxy-1,2-dimethylindole-4,7-dioneを合成し、続いて4-iodo-2-methoxyphenolを反応させることで、2を総収率25%で合成した。標識前駆体としては、放射性ヨウ素の導入と精製が容易トリブチルスズ体を設計し、2から収率36%で合成に成功した。
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