研究課題
本研究では,神経変性疾患に関連が深い分子として注目されている神経受容体のグループI代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1及びmGluR5)を標的とし,パーキンソン病の病態進行とこれら受容体の経時的変化をPETを用いて長期的に観察した.パーキンソン病のモデル動物は,ヒト由来の変性α-シヌクレイン(A53T)遺伝子を挿入されたラット(A54T-Tg)を用いて行い,mGluR1に対する特異的なPETリガンドとして[11C]ITDMを,mGluR5に対しては[11C]ABP688をそれぞれ用いてPETによりイメージングを行った.A53T-Tgラットは,10月齢で50%の個体でパーキンソン病を発症し,16月齢で100%となった.PETによる経時的な観察の結果,mGluR1に対するリガンドの結合能は,A53T-Tgラットにおいて4月齢から6月齢にかけて上昇し,その後,継時的に減少した.また,このmGluR1に対する結合能の変化は,パーキンソン病の行動薬理学的スコアと高い相関を示した.一方で,mGluR5に対するリガンドの結合能は,継時的な変化は見られず,病理スコアとも相関は見られなかった.本研究を通じて,αシヌクレインの蓄積のような慢性的な神経伝達の異常状態では,グループI代謝型グルタミン酸受容体の中でもmGluR1が脳内環境に応じて変化することが明らかとなった.
3: やや遅れている
本研究所の動物飼育施設で肝炎ウィルスにより汚染事故が発生したため,一時,動物の飼育及び実験が停止してしまったため.
現在までの研究成果で,パーキンソン病の病態進行に伴ってmGluR1の発現量が変化することが示唆された.今後はこれらの事象を裏付けるために,組織学的評価を行う予定である.
本研究所にて,肝炎ウィルスによる汚染事故が生じたため,施設クリーンアップまで実験が停止し,予定していた実験を行うことが出来なかった.
施設クリーンアップのために実験動物の処分を行ったので,統計学的に十分な検体数の確保が困難となった.よって実験動物数の追加を予定している.
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