研究課題
本研究では、神経変性疾患に関連の深い分子であるグループI代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1, mGluR5)に着目し、パーキンソン病のモデル動物における病態進行に伴うこれら受容体の経時的変化をPETを用いて長期間観察した。昨年度までの研究成果から、パーキンソン病モデルラット(A53T-Tg)は、6~8月齢頃から、明らかな行動障害を示す個体が見られ始め、10月齢には概ね50%が、16月齢でほぼ全個体でパーキンソン病様行動障害を示し、その行動異常の程度に相関して、mGluR1に対するPETプローブの結合量が脳の線条体において低下していくことが明らかとなった。平成27年度研究では、モデル動物の組織学的評価と生体内で示したmGluR1に対するPETプローブの結合量の変化が、mGluR1発現量の変化を反映しているのかを確かめるためのインビトロ評価を行った。はじめに、ラット脳切片を用いて抗体染色を行ったところ、A53T-Tgラット脳切片で、異常タンパクであるα-シヌクレインの凝集体が確認され、また、黒質緻密部においては、ドーパミン神経の脱落が観察された。続いて、同じく脳切片を用いて、インビトロ条件下におけるPETプローブの結合量をオートラジオグラフィ法によって定量的に測定したところ、PETを用いた実験結果と同様に、A53T-Tgラット線条体において、PETプローブ結合量の有意な減少を示した。本研究期間全体を通じて、PETによるmGluR1イメージングは、異常タンパクの蓄積が引き起こす脳神経疾患において、その疾患の進行度を客観的に判定することが出来る有用なツールとなり得ることを示唆した。
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The Journal of Neuroscience
巻: 36 ページ: 375-384
10.1523/JNEUROSCI.2289-15.2016.
http://www.nirs.qst.go.jp/information/press/2016/01_29.shtml