研究課題/領域番号 |
25861138
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
藤永 雅之 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (70623726)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トリフルオロメチル化 / KF |
研究概要 |
今年度は、1-ナフチルホウ酸を前駆体として1段階でホウ酸からトリフルオロメチル基に変換する条件について検討を行った。反応系中でCF3アニオンを発生させる条件として、すでに報告されているKFとClCF2CO2MeもしくはClCF2CO2Naを用い、銅塩との錯体形成を90-120℃で行った。銅塩にはヨウ化銅と酢酸銅を使用した。その結果、塩基存在下、加熱条件では3-5時間ですでに脱ホウ素化したナフタレンと1-ヨードナフタレンが主生成物として得られ、目的物である1-トリフルオロメチルナフタレンはtrace量でしか得られなかった。反応系中で発生するCuCF3の安定性が酸素存在下に弱い可能性も考え、窒素雰囲気下でも行ってみたが、大幅な収率の改善には至らなかった。また、モデル化合物であるナフタレンの反応性が低い可能性もあるので、他のモデル化合物として4-ビフェニルホウ酸を用いて、反応条件の検討を行った。しかしながら、結果はナフタレンの時と同様に主生成物として脱ホウ素したビフェニル体と4-ヨードビフェニルが得られ、trace量で目的物が得られるのみであった。参考までに4-ヨードビフェニルを出発原料にトリフルオロメチル化を行ったところ、より多くの目的化合物が得られた。以上の結果から、ホウ素誘導体を出発原料にした場合、目的物が生成するよりも脱ホウ素化、ヨウ素化が早く進行してしまうため、そのような副反応を抑える条件での検討が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は、モデル化合物に1-ナフチルホウ酸及び4-ビフェニルホウ酸を前駆体として1段階でホウ酸からトリフルオロメチル基に変換する条件について検討を行った。CF3アニオンを発生させるための条件として、既知であるKFとClCF2CO2MeもしくはClCF2CO2Naを用いた。KFによる置換反応後の脱炭酸を経由してのCF3アニオン発生には高い温度が必要なため、90-120℃で反応を検討した。また、基質をはじめから一緒に加える場合とCF3アニオンを形成後に加える方法も検討した。更に、銅塩にはヨウ化銅と酢酸銅を使用したが、酢酸銅では反応が進行しなかったため、ヨウ化銅を主に使用した。その結果、塩基存在下、加熱条件では3-5時間ですでに脱ホウ素化したナフタレンと1-ヨードナフタレンが主生成物として得られ、目的物である1-トリフルオロメチルナフタレンはtrace量でしか得られなかった。問題点として、脱ホウ素化、ヨウ素化反応がトリフルオロメチル化よりも早く、目的物が得られてこないと考えている。反応系中で発生するCuCF3が酸素存在下では分解してしまうことも考え、窒素雰囲気下でも行ってみたが、大幅な収率の改善には至らなかった。また、他のモデル化合物として4-ビフェニルホウ酸を用いて、反応条件の検討を行ったが、結果はナフタレンの時と同様に主生成物として脱ホウ素したビフェニル体と4-ヨードビフェニルが得られ、trace量で目的物が得られるのみであった。問題を解決するためには脱ホウ素化とヨウ素化をいかに抑えるかが重要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) CF3アニオンをより低温下で発生させる事で、ホウ素置換基の直接トリフルオロメチル化反応で起こる脱ホウ素化やヨウ素化を抑える。そのために、トリフルオロメチルアニオンをより低い温度(室温以下)で発生することができるBrCF2P(O)(OEt)2と塩基の組み合わせを利用して反応の精査を行う。さらに、活性種であると考えられる銅錯体[CuCF3]を系中でより安定に発生させるために二座配位子である1,10-フェナントロリンなどの配位子を用いることも併せて検討する。 (2) ワンポットで合成可能な前駆体合成法の確立とワンポット合成の合成条件を検討する。 (1)とは異なり、置換基をホウ酸から一段階でCF2SO2R(R = アルキル or アリール)基に変換する方法を開発する。そのための条件として、現在、ICF2SO2Rをパラジウム触媒存在下、アリールホウ酸とカップリングさせることを考えている。次に、得られた前駆体をフッ化カリウムと反応させてCF3基に変換する条件を最適化する。 (3) (1),(2)で検討した方法を用いて、それぞれ実際に[18F]KFを用いて自動合成装置にて標識合成を行う。モデル化合物にはナフタレンもしくは4-置換ビフェニルを使用する予定。実際に標識合成が自動合成装置内でできるように、温度、基質の量、反応温度の組み合わせを精査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた計画よりも研究の進行度が遅く、予定していた試薬類を購入しなかったため。 今年度は予定している研究計画の内容が多いため、その試薬購入に使用する予定。
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