本研究の最終目的である高エネルギーX線治療場における光核反応粒子を含んだ包括的な生物学的効果の評価を行うため、 X線と光核反応粒子の混合場での生物学的効果比(RBE)の算出を行った。 RBEは細胞実験などの生物実験より算出することが多いが、実験環境の構築に至っていないため、実験データより得られた放射線の物理情報から、MKM(Microdosimetric Kinetic Model)と呼ばれる生物モデルを用いてRBEを算出した。X線と光核反応粒子の混合割合、および光核反応粒子の放射線線質は測定深さによって異なるため、人体を模擬したファントム内で3種類の深さ(表面、5 cm、10 cm)についてRBEを算出した。その結果、もともとの15 MeVのX線を基準とした場合のRBEは深さによらず1。01となった。 さらに、これらの実験結果を裏付けるため、モンテカルロシミュレーションを実施し、実験値との比較を行った。昨年度まではシミュレーション条件によって実験データを完全に再現することができなかったため、今年度はシミュレーションコードの見直しを行い、低エネルギー荷電粒子のLET計算をできるだけ正確に行うようなコードの作成を行った。結果として、実験結果の傾向をある程度再現することができた。 これにより、単純条件での実験結果をシミュレーションにより、より臨床に近い条件で拡張するためのフレームワークが完成した。
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