研究課題
本研究は心移植における冷保存心グラフトを体外で修復し、再灌流後のグラフト障害軽減し、長期予後を改善する方法論を確立するために行う。グラフトを我々が開発した重水含有緩衝液内で低温酸素化、水素化し、冷保存中のエネルギー状態、細胞死、生存シグナルを生存方向に導く至適条件を見出し、保護メカニズムを精査する。具体的には、ラット心冷保存・移植モデルで検討するために、まず、ラット心臓の冷保存、移植モデルを作成した。現在、生存実験を行っている。生存実験が終わり次第、移植後の心グラフトを採取し、 アポトーシス・生存シグナル、保護性オートファジー、エネルギー代謝、細胞骨格関連タンパク、酸化ストレス・抗酸化能の推移、等を解析する予定である。新液による臓器保護機序にシャペロン分子14-3-3ζとその結合タンパクが関与することが示唆されたので、ラット心筋細胞株 (H9c2)を用いて、14-3-3ζの安定高発現細胞を作製した。冷保存、移植をmimicしたin vitro実験系を構築し、現在、14-3-3ζとエネルギー産生、酸化ストレス、アポトーシス、オートファジーを解析している。ラットでの解析が困難な分子もあるため、同様の実験をヒト尿細管上皮細胞株(HK2)を用いて行った。14-3-3ζ高発現HK2細胞では、冷保存によるATP減少が著明に抑制され、高度に保持されたATPにより、オートファジーが著明に抑制されることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
ラット心臓への低温下での遺伝子導入(plasmid)により、移植後のタンパク発現を増強させることができるとされるが(Ohshima et al. 2002 Transplantation)、われわれの検討では低温下では殆ど遺伝子導入されなかった。それゆえ、心グラフトに14-3-3ζタンパクの発現を増強させることは断念し、まず、心筋細胞を用いて14-3-3ζ高発現の保護効果を検証することを先決とした。
低温下での遺伝子導入が困難なので、心グラフトの保存自体を4℃ではなく、20-25℃ (sub-normothermic preservation)にする。われわれはこの保存法が可能な新規保存液を既に開発しているので、オリジナルの液を用いることによって、非低温下での遺伝子導入の至適条件を見出し、臓器保存、移植へと進め、Proof of Conceptを達成する予定である。
実験の進行上、実験の一部を次年度に繰り越したため、当該実験に使用予定であった試薬の購入費分が少々繰り越されることとなった。
当該実験に使用する消耗品の購入に適切に充当し、実験を進める予定である。
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