研究課題/領域番号 |
25861154
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 絵里 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30440506)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小児肝移植 / 抗体関連拒絶 / HLA |
研究概要 |
肝移植における術後、抗ドナーHLA抗体(Donor specific antibodies: DSA)は移植肝に与える影響については未解明な点が多い。今まで我々は、術後、長期経過小児症例において術後DSAが約40%に生じ、更に、それが移植肝の線維化と強い相関があることを報告してきた。しかし、どのような時期に、どのような頻度で術後新たなDSAが陽性になるかについてはまだ解明されておらず、今回の研究課題であった。 今回、我々は、肝移植後早期より、末梢血中のDSAの測定を行い、どのようなタイミングで陽性となり、DSAと移植後グラフト肝機能とどのような相関があるかについて検討を行ってきた。現在、本研究で明らかになった点は、小児肝移植患者症例では約3年以内に約40%の症例でDSAが陽性化することが明らかとなった。また、DSA陽性症例では、急性細胞性拒絶反応の頻度は高くないが、1年以上経過してから発症する、晩期急性拒絶反応の発生頻度が高いことが明らかになった。しかし、DSA陽性症例とDSA陰性症例の間に肝酵素や病理組織上の線維化の程度に有意差を認めなかった。本研究で、術後に抗体関連型拒絶反応と診断される肝機能障害を引き起こす術後新規DSA陽性症例が存在することがあきらかとなり、それらの症例は治療抵抗性で、線維化の進展、肝機能異常の遷延が見られることが明らかであった。この経過は比較対象として行っている成人症例と異なり、小児症例に特異的な所見であり、今後の研究によって、そのメカニズムの解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、順調に移植後のDSAのモニタリングが行えており、その、移植肝における影響について明らかになりつつある。しかし、DSAのサブクラス解析による、グラフト肝への影響の違いや、抗体関連型拒絶反応をひきおこおすメカニズムについて、DSAのサブクラス解析をおこなう予定であったが、サブクラス解析のための予備実験が昨年度中に試薬の調整などの予備実験が終了したため、本年に引き続き研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、順調に移植後のDSAモニタリングが行得ており、更に対象症例が増えているため、DSAに対する治療効果および、治療によるグラフト機能改善について検討を行っていく予定である。この研究を推進することで、小児肝移植後のDSAのグラフト肝に与える影響が明らかになり、その治療方法が確立することが期待されるため、症例の蓄積、サブクラスの解析、病理学的検討を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、DSAのサブクラス解析を行う予定であったが、その予備実験で終了し、患者検体での本実験に入れなかったために、次年度使用額が生じる結果となった。 DSAのサブクラスのためのサンプル収集は順調に進んでいるため、次年度の研究計画の沿って、DSAのサブクラス解析および治療前後のDSAの推移、病理標本の免疫染色などに使用する予定である。この研究を通じて、小児肝移植後早期におけるDSAの移植肝に対する影響を明らかにする予定である。
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