研究課題/領域番号 |
25861160
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山下 奈真 九州大学, 大学病院, その他 (60608967)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | EMT / triple-negative乳癌 / E-cadherin / vimentin / basal-like乳癌 |
研究概要 |
上皮間葉系移行(epithelial-mesenchymal transition; EMT)は癌の浸潤転移において重要な役割を果たすと考えられている。本研究は乳癌の中でもエストロゲンレセプター陰性、プロゲステロンレセプター陰性、HER2蛋白陰性のtriple negative乳癌(TNBC)とEMTとの関連を明らかにし、新たな治療戦略を検討する事を目的とする。 我々はqRT-PCRを用いて各種乳癌細胞株におけるEMTマーカー(E-cadherin,vimentin)の発現量を比較した。Basal-like型乳癌細胞株(MDA-MB231,Hst578)ではE-cadherinの発現が低く、vimentinの発現が高いことが分かった。当科にて手術を施行された、浸潤性乳管癌切除例756例のうち100例のTNBCを対象に、E-cadherin、vimentinの発現をqRT-PCR、免疫組織化学染色にて評価した。また、免疫組織化学染色にてCK5/6もしくはEGFR陽性のものをbasal-like型乳癌と定義し、予後との関連を評価した。TNBCではE-cadherinの発現低下、vimentinの発現増加を認めた。また、vimentin陽性例は若年者に多く、高い核グレードを示した。vimentin発現はTNBCにおいて全生存、無再発生存に対する独立した予後因子であったが、E-cadherin発現には予後との相関は見られなかった。basal-like型乳癌においてもvimentin陽性例は有意に低い無再発生存率を示した。EMTのマーカーであるvimentinはTNBC、basal-like型乳癌の予後因子であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標としていた、乳癌細胞株及び乳癌組織検体におけるEMT関連因子、E-cadherin,vimentinの発現解析を終了し、vimentinはTNBC、BLBCにおける予後不良因子であることを確認した。研究はおおむね順調に進んでいると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
1. EMTのシグナル伝達上重要と考えられている、E-cadherin転写調節因子のTWIST、SNAIL、SIP1などの各種因子およびTNBCの予後不良因子と考えられたvimentinの下流因子であるAXLの発現量比較を乳癌細胞株・乳癌組織検体を用いて行っていく。 2. マイクロアレイを用いた網羅的解析 Triple negative乳癌の中で特に予後不良な群と予後良好な群の症例のRNAを用いて、マイクロアレイにより遺伝子発現を網羅的に解析し、そのプロファイルを比較する。両群で発現パターンに特に差のある遺伝子を探索し、そのような遺伝子が同定された場合には多くの臨床サンプルを用いてqRT-PCRにてmRNA発現の確認実験を行う。特に浸潤転移、抗癌剤感受性に関与する因子に注目している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたTWIST、SNAIL、SIP1などの各種因子およびTNBCの予後不良因子と考えられたvimentinの下流因子であるAXLの乳癌細胞株・乳癌組織検体における発現量比較研究を当該年度では行えなかった為。 当初予定していたTWIST、SNAIL、SIP1などの各種因子およびTNBCの予後不良因子と考えられたvimentinの下流因子であるAXLの乳癌細胞株・乳癌組織検体における発現量比較研究およびマイクロアレイを用いた網羅的解析を行う為に必要な試薬を次年度繰越額1,060,134円で購入する。および、研究成果を国際学会等で発表する際の旅費として一部使用する予定である。
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