研究課題/領域番号 |
25861161
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
堺 裕輔 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10608904)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肝細胞 / 細胞シート / 再生医療 / 血管新生 |
研究概要 |
本研究では、ヒト初代肝細胞/非実質細胞複合シートの開発、およびその移植による異所性血管誘導肝組織の構築を目指す。異所性肝組織の構築により、慢性肝不全や遺伝性肝疾患などにおける肝機能の改善を明らかにし、低侵襲な肝細胞移植デバイスの確立を最終的な目標としている。本年度では、支持細胞として用いる細胞の種類の検討を行い、肝細胞複合シート作製条件の最適化を行った。 1. 肝細胞/非実質細胞複合シートの開発と基本性能評価: 良好なハンドリング性能を有する肝細胞複合シートの作製に成功した。肝臓由来非実質細胞(主として線維芽細胞や星細胞を含む)、皮膚由来線維芽細胞、間葉系幹細胞(骨髄由来および脂肪由来幹細胞:MSC、ADSC)を支持細胞として用い、ヒト初代肝細胞を培養したところ、いずれの細胞を用いても作製が可能であった。肝細胞/線維芽細胞複合シートは肝細胞のみで構成された細胞シートと比較して、アルブミン産生活性は1/3程度であったが、血管新生因子であるVEGF、TGFb1、HGFの産生に優れていた。これらの結果から、移植部位において迅速な血管誘導が期待でき、本研究の目的である血管誘導肝組織の構築を遂行し得るデバイスとなる。 2. 皮下移植における肝細胞/非実質細胞複合シートの効果:作製した肝細胞複合シートを免疫不全マウスの皮下に移植した。皮膚由来線維芽細胞(TIG-118細胞)もしくはADSCを含む肝細胞複合シートを移植したマウスで、高いヒトタンパク質濃度を検出した(2014年3月に開催された再生医療学会で報告)。現在までに、厚みのある皮下肝組織の構築を実証しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度は、研究実績で示した「1. 肝細胞/非実質細胞複合シートの開発と基本性能評価」を行うこととしていた。研究が早く進捗し、平成26年度に予定していた移植効果に関する検討に既に取り組んでおり、計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、厚みのある皮下肝組織の構築を実証しつつある。平成26年度は、再現性の検討と、皮下組織の免疫化学染色、電子顕微鏡による詳細な解析を進める予定である。さらに、肝疾患モデルマウスを用い、肝機能改善の評価を行う。 一方、肝細胞単独培養シートでは、ヒト初代肝細胞の増殖を顕微鏡下で確認した。今後、新たに肝細胞単独シートにおける細胞増殖の基本性能の関連を調査したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ELISAや培養試薬等は現有のものを使用し、旅費に関しても当該予算から支出しなかったため、次年度使用額が生じた。 皮下肝組織の免疫化学染色、電子顕微鏡による詳細な解析、肝疾患モデルマウスを用いた肝機能改善の評価を行うために、抗体やマウス、その他の消耗品の購入に充てる。 それに加えて、肝細胞単独シートにおける増殖能を効率的に評価するため、蛍光プレートリーダーを購入する。
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