研究課題
本研究では、ヒト初代肝細胞/非実質細胞複合シートの開発、およびその移植による異所性血管誘導肝組織の構築を目指す。異所性肝組織の構築により、慢性肝不全や遺伝性肝疾患などにおける肝機能の改善を明らかにし、低侵襲な肝細胞移植デバイスの確立を最終的な目標としている。1. 最終年度に実施した研究の成果:本年度では、ヒト初代肝細胞/非実質細胞複合シートを免疫不全マウス皮下に移植し、厚みのある皮下肝組織の構築を実証した。構築した皮下肝組織の構造を解析したところ、グリコーゲン貯蔵、肝特異機能の産生(アルブミン、α1-アンチトリプシン、血液凝固第9因子等)、肝小葉に似た肝細胞の索状構造と肝細胞の極性や毛細胆管の再構築を明らかにした。また、肝不全モデルマウスであるTK-NOGマウスを利用し、肝不全治療の可能性を示した。さらに、ヒト初代肝細胞/非実質細胞複合シートは、播種細胞密度等を最適化することによって、最短で培養2時間での作製できることが明らかとなった。2. 研究期間全体を通じて実施した研究の成果:本研究において、良好なハンドリング性能を有する肝細胞複合シートの作製に成功し、血管新生因子であるVEGF、TGFb1、HGFの産生に優れていることを証明した。これらの結果は、移植部位において迅速な血管誘導が期待でき、従来は生着が極めて困難であるが低侵襲な移植部位である皮下への移植をチャレンジした。結果として、皮下において血管誘導肝組織の構築を可能にし、上述の特徴や肝不全治療への応用可能性を示した。
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