多臓器転移性乳癌細胞株であるMDA-MB231細胞株、および脳転移指向性乳癌細胞株である231BR細胞株の分子生物学的相違を検討するため、約2万のヒトゲノムについて遺伝子発現解析を行った。結果、同一のoriginである2細胞間において、有意に発現差を生じる複数の遺伝子が認められた。MDA-MB231に高発現する遺伝子としてその差が最も大きかったCHRLD1は77.66倍のfold change(p<0.01)、231BRに高発現する遺伝子として最も差の大きかったSLC14A1は137.46倍のfold change(p<0.01)を認め、その他上位遺伝子の多くが、脳転移に関わる文献的報告を認めない集団であった。 さらに、遺伝子変異に伴うmorphology changeの可能性も考慮し、2細胞間のゲノムシーケンスを行い、複数の遺伝子変異を確認している。研究計画にされていた分子生物学的解析は完遂されたが、実際に切除されたヒト乳癌組織を用いた検証実験には学内倫理委員会の裁定が必要であり、事務的スケジュールの都合上、最終年度内に完遂することができなかった。
|