乳癌治療の臨床現場においては、手術治療は徐々にその侵襲程度は縮小傾向にあり、低侵襲治療が今後は注目されることが想定されているのが現状である。そのため、乳癌モデルマウスの作成を行い、乳癌に対する低侵襲性治療の一つとして凍結療法を行うことによりマウス個体の生存期間の延長・遠隔転移の抑制・癌の局所進行制御さらには免疫系のサイトカインの変動によりもたらされる抗腫瘍効果の証明を行うことを目的とした動物実験を行ってきた。凍結療法の介入により非介入群と比較して生存期間の延長に関しては証明することができた。一方で癌の局所制御に関しては凍結療法がもたらす組織壊死の影響により当初予定していた腫瘍径の測定による治療効果の評価が困難な状況であることが確認され、マクロでの局所の治療効果を定量的に証明することが極めて困難であった。免疫系のサイトカインの測定による抗腫瘍効果の証明に関しては、治療介入群と非介入群での比較を行い凍結療法によってもたらされるサイトカインの経時的な変動を確認することができた。以上の結果に関しては2015年度までの実験で証明されており、関連学会にて報告をおこなっている。最終年度である2016年度はこれらの実験結果から関連学会誌への投稿を目的とした論文の作成を主に行ってきた。また、これまでの動物実験にて得られた結果をもとに、乳癌治療の臨床現場における凍結療法のさらなる幅広い臨床適応を目的に応用可能なマテリアルの検索、国際学会への参加により凍結療法の臨床応用の可能性につき検討してきた。当初凍結療法と化学療法の併用による治療効果の相乗効果を期待する動物実験を予定していたが、今回の期間内には着手することができず今後の課題とした。
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