研究課題/領域番号 |
25861168
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
深町 佳世子 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (00626137)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳がん / HER2 / ホスファターゼ / BRCA1 / PP6 / SNPs / ノックアウトマウス / 発がん実験 |
研究概要 |
(1)HER2を基質とするホスファターゼと癌化との関係 HER2の脱リン酸化の異常が、HER2の過剰なリン酸化をひきおこし、それば乳がんの発症の原因になる可能性を想定して、研究を行ってきた。HER2ホスファターゼの遺伝子異常の存在を仮定して、乳がん組織における遺伝子変異の有無を解析した。その結果、HER2ホスファターゼの1つPTPN18の活性ドメイン内のWPD-loopモチーフに隣接してアミノ酸の変異を伴うSNP、PTPN18 (A604G)があることを見いだした。我々の仮説は、「PTPN18(A604G)によるアミノ酸変異 → WPD-loopモチーフを含むタンパクの構造変化 → 脱リン酸化酵素の失活 → HER2異常活性化 → 乳がん発生」である。現在、仮説の検証を行っている。 (2)BRCA1複合体に存在するホスファターゼ (PP6) の機能解明 BRCA1のリン酸化制御の破綻と、乳がんと関連を解明するために、複合体を形成している分子種を探索し、脱リン酸化酵素のPP6(protein phosphatase 6)がBRCA1と共沈することを明らかにした。最近、PP6の触媒サブユニット(Ppp6c)の遺伝子変異が、ヒトの悪性黒色腫に高頻度に同定され、PP6が腫瘍発生に重要な意義をもつことが示唆されてきた。この事実に基づき、我々はPpp6c遺伝子改変マウスの作製を行い、PP6のin vivoでの機能解明を行うと共に、発がん実験によりがん化との関係を明らかにすることを目的とした実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)HER2を基質とするホスファターゼと癌化との関係 我々が見いだしたSNP、PTPN18 (A604G)の頻度は、検討した症例においては、8例/145人であった。本SNPは、日本人の代表的なSNPデータベースである東大医科研のJ-SNPには登録されていなかった。一方、本SNPはNCBIのdbSNP(SNPデータベース)には登録されていた。しかしその頻度はわずか3例/629人であった。このデータと比較すると、当センター乳がん患者においては、本SNPの頻度が明らかに高いことが示された(P=0.0027)。したがって、PTPN18 (A604G)、が乳がん体質のリスクの1つである可能性があると考える。 (2)BRCA1複合体に存在するホスファターゼ (PP6) の機能解明 conditionalに、PP6の触媒サブユニット(Ppp6c)をノックアウトするための、ターゲティングベクターを作成し、ES細胞においてターゲティングした細胞を得た、さらにそれを用いて、キメラマウス、ヘテロマウスの作成に成功している。掛け合わせ用の、CAG-CREもすでに準備している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)HER2を基質とするホスファターゼと癌化との関係 PTPN18(A604G)と乳がん罹患率との関係の検討:一般日本人女性および乳がん患者のゲノムDNAに関して、さらに数を増やして解析する。 PTPN18 (A604G)のシグナルへの影響の解明:PTPN18 (A604G)の酵素活性、HERのシグナルへの影響をin vitroと、細胞レベルで解析する。 (2)BRCA1複合体に存在するホスファターゼ (PP6) の機能解明 PP6 欠損マウスのフェノタイプを解析する。患者の癌組織におけるPP6関連タンパクの遺伝子の異常の有無を解析する。
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