国外から重要な発見があった。悪性黒色腫の全exonシークエンスのデータから、プロテインホスファターゼ6型(PP6)の触媒サブユニット(Ppp6c)の遺伝子変異が悪性黒色腫において高頻度に見出され、同ローカスにLOHを伴うことから、PP6のloss of functionが、ドライバー変異として働く可能性が示唆された (Cell 2012 Landscape of driver mutations in melanoma)。また最新の大規模ゲノム解析プロジェクトであるTCGA(The Cancer Genome Atlas)によると、PP6遺伝子変異は、悪性黒色腫のみならず、乳がん、大腸がん、子宮内膜がんなどに広く存在する。乳がんを含めた複数のがんでPP6が、がん抑制遺伝子として働く可能性があることが示唆された。PP6が、がん抑制遺伝子であるという証明のため、Ppp6c 遺伝子改変マウスの作製をおこなっていた。conditional KOマウスを作製し、皮膚2段階発がん実験を行った。その結果、皮膚でPpp6cを欠損したマウスは、腫瘍の形成時期が大幅に早まること。さらには、DMBA処理のみで皮膚腫瘍が生じることを明らかにした。この結果はPP6機能不全が、腫瘍発生のプロモーション作用をもつことを意味した。その原因は、主にケラチノサイトにおけるNFkB経路の過剰な活性化による炎症反応の増強のためであることがわかった。
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