研究課題/領域番号 |
25861171
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
神山 篤史 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (50647005)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 回腸嚢炎 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎ならびに家族性大腸腺腫症における標準術式は大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術である。本術式の晩期合併症として回腸嚢炎が発生することがあるが、その発生頻度は潰瘍性大腸炎で高く、家族性大腸腺腫症ではほとんど認めない。回腸嚢炎の発症機序は未だ不明であるが治療に抗生剤やプロバイオティクスが有効であることから、腸内細菌叢との関連性が示唆されてきた。本研究の目的は、潰瘍性大腸炎が遺伝的背景をもとに術後の腸内細菌のいったい何が変わることによって本来病変の存在しなかった回腸に炎症が生ずるのかを明らかにすることである。さらには、「回腸嚢炎は、術後の回腸嚢に起こる潰瘍性大腸炎の再燃であり、潰瘍性小腸炎である」とする仮説に基づき、潰瘍性大腸炎の病因究明につなげることである。 当科では、潰瘍性大腸炎もしくは家族性大腸腺腫症の手術は2回あるいは3回に分割して行っている。すなわち、1回目に大腸亜全摘、2回目に残存直腸切除・回腸嚢肛門吻合・一時的人工肛門造設、3回目に人工肛門閉鎖を行う3期分割と、1回目に大腸全摘・回腸嚢肛門吻合・一時的人工肛門造設を行う2期分割である。本研究の対象患者は3期分割手術の2回目終了後もしくは2期分割手術の1回目終了後の患者である。 本年度は現在までに潰瘍性大腸炎3症例が登録されており、延べ5回分の検体が採取されている。同意拒否の症例もあり集積が思うように進んでいないのが現状である。しかしながら本研究においては症例集積が重要であり、次年度も経時的に検体を採取していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は臨床検体を用いた研究であり、研究の進行度は当該年度の採取可能な検体数に左右される。これまで当院では年間20例前後の潰瘍性大腸炎と年間3例前後の家族性大腸腺腫症の新規手術例がいたが、本年度の新規手術数はこれまでの半数程度であり、予想以上の減少であった。その理由としては、近年の内科治療の進歩により潰瘍性大腸炎の寛解状態が維持できる症例が増えたことと、炎症性腸疾患を多く扱う病院が大学以外にも複数できたためにこれまで大学に集中していた症例が分散したこと、同一個体からの検体採取が比較的頻回なため患者の同意が得られづらいことなどが挙げられる。 当初の予定より臨床検体採取がうまく進んでいないために、研究を先に進めることができず、研究の達成度は”遅れている”と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も引き続き潰瘍性大腸炎および家族性大腸腺腫症の患者からの採便と回腸粘膜の生検組織による検体を採取していく予定である。また、並行して本研究のコントロールとして大腸癌患者(主に回腸と結腸を同時に切除される右結腸切除術予定の患者)から正常回腸粘膜と正常結腸粘膜を採取してRNAとして同一検体における回腸と結腸における遺伝子発現の違いをマイクロアレイ法などの方法を用いて調べる予定である。これにより、いわゆる「小腸型」遺伝子と「大腸型」遺伝子をピックアップして、症例集積後に回腸嚢粘膜から採取した遺伝子情報と比較する予定である。
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