研究課題
本年度も引き続き潰瘍性大腸炎(UC)および家族性大腸腺腫症(FAP)の患者からの採便と回腸粘膜の生検組織による検体を採取していくことを中心に行った。これまでにUC患者3名およびFAP患者1名から検体の採取の同意を得て経時的にサンプルの採取を行っている。しかしながら、内科治療の進歩に伴う手術患者数の減少とプロトコールの煩雑性のためか検体の採取は思うように進まず、解析を行うまでには至らなかった。このため、予備実験として以前採取していた検体を用いて再度解析を行うこととした。以前に採取して抽出していたTPC後のUC患者29人、健常成人(control)31人の糞便からDNAを用いてterminal restriction fragment length polymorphism(T-RFLP)法にて解析した。UC患者からは同一個体から繰り返し採取したものも含めて回腸瘻便23検体、回腸嚢炎未治療13検体、回腸嚢炎に対して抗生剤治療後10検体の計46検体を用いた。健常人31検体を合わせた77検体でdendrogramを作成したところ、Cluster解析では抗生剤治療後の便は回腸瘻便と近くなり、回腸嚢炎未治療の便は健常人と近い便であることが示された。以前の研究で大腸全摘後の患者で便中細菌叢が経時的に健常人に近づくことを示したが、今回の結果から回腸嚢炎に対する治療は健常人の細菌叢から回腸の細菌叢へ近づけている可能性が考えられた。しかしながら、腸内細菌叢の研究においては個体差は大きいため、やはり同一個体から経時的に採取を続けていくことが肝要である。また、FAP患者の検体での検討が不十分である。このため、本研究期間の終了後も引き続き検体の採取を続けていく予定である。
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Internal Journal of Clinical oncology
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