研究課題/領域番号 |
25861172
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
田村 孝史 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20633192)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肝線維化モデル / RT-PCR / TIMP-1 / α-SMA |
研究概要 |
1 肝星細胞に対するアデノシンの影響の検討:in vivoにおいて,不死化ヒト肝星細胞株にアデノシンを添加し,形態が活性化型から静止型へと変化することを確認した.α-SMA の発現がアデノシン添加により抑制されることをWestern blotで確認した. 2 肝線維化モデル動物の作成: SDラットに胆管結紮を施行し,線維化傾向を検討した.胆管結紮後1w-5wの組織標本をMasson trichrome染色(以下,MT染色)により評価した.胆管結紮後1wでGlisson周囲の線維化を認め,経時的に架橋形成が増強し不可逆性の線維化を生じていたため,実験モデルをSDラット胆管結紮1w以内の系に設定することとした. 3 肝線維化モデル動物におけるアデノシンの影響の検討:予備実験1として,sham手術群,胆管結紮群,胆管結紮およびアデノシン静注(単回投与)群の3群を設定し,血液生化学(AST, ALT, T-bil),肝組織標本(MT染色),Western blot(α-SMA),PCR(COL1A1)を比較した.胆管結紮群,胆管結紮およびアデノシン投与群では,組織,Western blot,PCRとも線維化傾向がみられたが,アデノシン投与の有無での有意差を認めるものではなかった.予備実験2として,胆管結紮後のPBS複数回投与群とアデノシン複数回投与群(胆管結紮直前と24,48,72時間後の計4回)を行い,結紮96時間後に犠牲死させ評価した.血液生化学およびWestern blotでは両群間に差が見られなかったが,PCRでは線維化傾向とともに増加するTIMP-1の発現がアデノシン投与群で有意に低下しており,アデノシンの複数回投与による線維化抑制効果の可能性が考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レチノイン酸修飾アデノシン封入リポソームの開発に先立ち,in vivoにおける線維化モデルの確立やアデノシン単剤での線維化抑制効果を確認する必要があったため,in vitroよりin vivoの実験を優先し,また予備実験に時間を要したため,in vitroでのアデノシン投与による線維化抑制のメカニズムの解明に関して,肝星細胞活性化が抑制されていることを確認するにとどまった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は肝星細胞に直接的に作用するリポソームを用いた実験を開始する予定である.リポソームの作成は北海道大学大学院薬学研究院薬剤分子設計学研究室と共同研究で行い,リポソーム内にアデノシンを封入したレチノイン酸修飾アデノシン封入リポソームを作成する.In vitroでは不死化ヒト肝星細胞株(TWNT-1)にレチノイン酸修飾アデノシン封入リポソームを添加し,アデノシン単剤添加と比較して肝星細胞の活性化を検討する. In vitroの実験と平行して,in vivoではラット胆管結紮モデルにアデノシンを封入したレチノイン酸修飾アデノシン封入リポソームを投与し,肝星細胞の活性化および肝線維化の抑制効果を検証する. 計画通りにリポソーム作成が進まないときには、レチノイン酸以外の肝類洞内に特異的に存在 する受容体 (例えば、肝類洞内皮細胞に特異的に存在するヒアルロン酸受容体) に対する Ligand (例えばヒアルロン酸) をリポソームに修飾するようにする.予備実験として,ヒアルロン酸を Ligand としたリポソームは,肝類洞内皮に特異的に膠着することを確認している.
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次年度の研究費の使用計画 |
線維化モデルの確立およびアデノシン単剤での線維化抑制効果の確認のため,DDS製剤の作成が次年度に行う予定となり,残額が生じた. 新規DDS製剤の開発のため,翌年度予定していた実験(DDS製剤を用いたin vivo実験)に加えて施行する予定としている.
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