有効性の確立した肝線維化治療法は肝移植のみであり、他の治療法の確立が必要である。我々は肝線維化が血小板増加により抑制される事を報告した。また血小板はアデニンヌクレオチドを介し肝星細胞の活性化を抑制し、Ⅰ型コラーゲン産生を抑制することを報告した。そこで肝類洞内に存在する肝星細胞に直接的作用を及ぼすレチノイン酸に着目し、レチノイン酸修飾アデノシン封入リポソームを作成することで選択的に肝線維化を抑制する事を試みた。まず、不死化ヒト肝星細胞株(TWNT-1)に対しアデノシン添加することによりTWNT-1の活性化が抑制されることを確認した。さらに、線維化モデル動物として胆管結紮モデルを作成し、胆管結紮群および胆管結紮群+アデノシン投与群を設定し血液生化学・Western blot・RT-PCRを測定するも、繊維化を示すマーカーに両群間で明らかな有意差を認めなかった。アデノシンの全身投与ではin vitroで効果の見られた濃度1000μM(267.24μg/ml)を肝局所で維持することは困難であることが判明し、レチノイン酸修飾アデノシン封入リポソームの作成を試みたが、電荷の問題などでDrug Deliveryとしての有効性を示す結果を得られなかった。現在、リポソーム化ではない新規の製剤を作成することを目標に研究を継続中である。
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