研究概要 |
科研費申請時に本研究において使用するとしたICG-Liposome(ICG-L)は、その作成に関する論文が公表され、正式名称をLP-ICG-C18とした(Toyota T, Bioorg Med Chem. 2014 Jan 15;22(2):721-7)。 本年度は、C3H/Heマウス扁平上皮癌株であるSCC7を用いて行った基礎研究をもとに、ヒト扁平上皮癌細胞株で代表的なTE2とT.Tnを用いて、LP-ICG-C18の動態と近赤外光を用いたphotodynamic therapy(PDT)による効果の検討を行った。 LP-ICG-C18の添加による培養細胞への取り込みは、SCC7の場合と同様であり、TE2とT.Tnともに培養細胞への添加後24時間で細胞への取り込みが蛍光顕微鏡により確認された。取り込みのレベル(蛍光強度)は通常のICG溶液を同濃度で添加した場合と同じであった。また、培養細胞に対する毒性を細胞形態の変化とMTT assayを用いて検討を行った。ICG修飾を行っていないリポソーム(LP)やLP-ICG-C18を単純に培養細胞に添加したのみでは細胞死は惹起されず、LPやLP-ICG-C18単体での細胞障害性は否定的であった。近赤外光を照射したところ、薬剤を添加していない細胞やLPを添加した細胞には特に変化が認められず、近赤外光単体での細胞障害性やLPに対して近赤外光を照射した場合の細胞障害性も否定的であった。LP-ICG-C18を添加して近赤外光を照射しPDTを行った細胞では細胞形態の変化を認め、MTT assayによる評価でも生存細胞数の有意な減少を認めた。これらの結果により、LP-ICG-C18に修飾されているICGがPDTによる細胞障害性に関与していることが示唆され、LP-ICG-C18のヒト扁平上皮癌でのPDTの効果が確認された。
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