研究課題
若手研究(B)
【背景】Matrix metalloproteinase(MMP)が発現し浸潤能を発揮する癌浸潤突起invadopodiaは、その骨格であるアクチン線維がアクチン結合タンパク質、Fascinに束化され安定化している。今回、我々はFascinおよび膜型MMPの一つ、MMP14の食道扁平上皮癌(ESCC)での発現の意義を明らかにし、新たな治療方策を模索した。【方法】術前未治療ESCC手術検体におけるFascin、MMP14のmRNA・タンパクの発現解析および、Fascin、MMP14を制御するmicroRNA (mir) -133aの発現解析を行った。またESCC細胞株でFascin、MMP14、miR-133aの機能解析を行った。【結果】手術検体の免疫組織学的染色による検討では、多変量解析からFascin、MMP14は共に単独で予後不良因子であり、両陽性群は他の群に比し予後が有意に悪かった。手術検体における両者のmRNA発現には有意な正の相関を、miR-133aとFascin及びmiR-133aとMMP14には負の相関を認め、miR-133a低発現群は高発現群に比し予後不良であった。細胞株へのFascin、MMP14のsmall interfering (si) RNA導入ではそれぞれFascin、MMP14のmRNA及びタンパク質の発現が抑制されたが、他の一方の発現への影響は認めなかった。miR-133a mimic導入では両者の発現が低下した。またsiFascin、siMMP14、miR-133a mimicいずれの導入においても細胞株の遊走能が抑制されたほか、siMMP14およびmiR-133a mimic導入ではコラーゲンI浸潤も抑制された。
2: おおむね順調に進展している
食道癌手術検体におけるFascinの発現を確認し臨床病理学的検討を行ない、細胞株での機能解析を行ったほか、MMP14についても同様の検討を行った。また両者を制御するmicroRNA、mir-133aを同定し、同様の検討を行った。
Fascin, MMP14阻害およびmiR-133a導入のin vivoでの詳細な検討を行い、新たな食道癌治療ツールの開発を目指す。
研究の進行が予想よりもスムーズであり、頻回の試薬購入を抑えられた。次年度での試薬購入に充てる予定。
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British Journal of Cancer
巻: 110 ページ: 189-98
10.1038