研究実績の概要 |
本研究では、潰瘍性大腸炎術後回腸嚢炎発症の病態機序および危険因子を明らかにすることを目的としている。 手術時回腸粘膜においてFK506 binding protein (FKBP5)、forkhead box protein (FOX)の発現量を定量化し、これらの高発現は回腸嚢炎発症のリスク因子であることが明らかにした(Dig Dis Sci. 2015荒木、第110回日本消化器病学会総会大北)。術直前の直腸粘膜における病理学的な重症度と回腸嚢炎活動度指数が相関することを報告し、重症度の高い症例ほど回腸嚢炎のリスクが高いことが示された(Hepatogastroenterology, in press荒木)。また手術時回腸粘膜におけるIL-1β発現量高値群は回腸嚢炎の累積発症率が高く、大腸の罹患範囲、重症度とも相関し、回腸嚢炎発症の予測因子として有用であることが示唆された(第115回 日本外科学会定期学術集会川村)。回腸嚢粘膜においてIL-1βおよびIL-6の発現量は回腸嚢炎活動度指数と有意な正の相関が認められ、これらのサイトカインが回腸嚢炎の病勢を反映していることが示された(第115回 日本外科学会定期学術集会大北)。回腸嚢炎患者および非回腸嚢炎患者の術後回腸嚢粘膜よりmiRNA arrayを施行し、網羅的に回腸嚢炎関連miRNAを検索した。この解析により発現量が2倍かつ有意差のある11種類のmiRNA(miR-222-3p,let-7i-5p, miR-125b-5p,miR-361-5p, miR-557,miR-140-3p, miR-4665-3p, miR-4792, miR-128-1-5p,miR-6812-5p,miR-8080)が同定され、Real-time PCRにより少数サンプルでの発現が確認された。今後多数サンプルを用いて検証する予定である。
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